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日外会誌. 90(5): 736-744, 1989


原著

ラット膵ラ島同種移植に関する研究
ーRT1亜領域差および抗RT1.Dモノクローナル抗体処理による生着効果ー

大阪市立大学 医学部外科学第1教室(主任:梅山 馨)

金 義哲

(1988年6月1日受付)

I.内容要旨
ラット主要組織適合系(RT1)のクラス1抗原であるRT1.AおよびクラスII抗原であるRT1.B,Dの明らかな各種近交系ラットを用いて単離膵ラ島同種移植を行い,併せて抗RT1.Dモノクローナル抗体にてin vitro処理後の膵ラ島同種移植を行い,RT1.A,B,D各亜領域の差異および抗RT1.Dモノクローナル抗体処理が移植膵ラ島の生着に及ぼす影響について検討した.膵ラ島の単離はcollagenase消化法とFicoll濃度匂配遠沈法との併用にて行い,streptozotocin糖尿病ラットの脾内に移植した.移植膵ラ島の拒絶の判定は空腹時血糖値150mg/dlを指標として行い,以下の成績を得た.
1)RT1.A不適合・B,D適合間移植では比較的緩徐な把絶を示すか,又は60日以上の長期生着を示したが(平均生着日数,以下MSTと略す;>39.6±18.7),RT1.A適合,・B,D不適合間移植では全例急性拒絶を示した(MST;7.6±2.5).
2)RT1.B不適合・A,B適合間移植では比較的緩徐な拒絶を示したが(MTS;24.4±5.6),RT1.D不適合・A,B適合間移植では全例急性拒絶を示した(MST;7.4±3.0).
3)以上の成績から,ラット膵ラ島同種移植においてはRT1.Aの差異は完全fs barrierとはなり得ず,RT1.B,Dの差異が急性拒絶反応の惹起に大きく関与し,なかでもRT1.Dにより強い移植免疫原性のある事が示唆された.しかしRT1.D適合・A,B不適合間移植でも全例急性拒絶を示し(MST;7.0±1.9),移植膵ラ島の生着にはRT1.B,Dが共に適合している事が重要であると考えられた.
4)一方,抗RT1.Dモノクローナル抗体処理膵ラ島移植(MST;>42.6±17.3)では,その対照群である同じDonor・Recipientの組み合わせの全異系移植(MST;8.4±1.5)に比して著明な生着延長が認められ,ラット膵ラ島移植における急性拒絶反応の抑制には抗RT1.Dモノクローナル抗体が有用であると考えられた.

キーワード
膵ラ島同種移植, ラット主要組織適合系, RT1 亜領域差, 抗 RT1, D モノクローナル抗体抗 Ia 抗体

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