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日外会誌. 90(5): 705-711, 1989


原著

肝炎自然発生LEC (Long Evans Cinnamon) ラットにおける肝炎発生原因の検索

1) 北海道大学 医学部癌研病理
2) 北海道大学 医学部第1外科
3) 札幌医科大学 医学部病理
4) 北海道大学 理学部動染研

波江野 力1)2) , 武市 紀年1) , 伝法 公麿3) , 森 道夫3) , 内野 純一2) , 佐々木 本道4) , 小林 博1)

(1988年1月29日受付)

I.内容要旨
LECラットの肝炎発生の原因を検索する目的で肝炎ウイルス関与の有無,遺伝的背景の有無およびIgG(immunoglobulin G)levelと肝炎発生との相関関係について検討した.
①肝炎ウイルスは形態学的(電子顕微鏡)および免疫学的(間接蛍光抗体法)に同定することはできなかった.
②肝炎発症前・中・後のLECラットの血清・血漿・肝ホモジェネートを新生仔LEA(Long Evans Agouti)およびWKA/H(Wistar King Aptekman/Hok)ラットに接種したが,肝炎の発症を誘発することはできなかった.
③肝炎条症前のLECおよびLEAラットにステロイドホルモンを投与し,免疫抑制状態下での肝炎発症促進効果をみたが,自然発症時期を有意に短縮することはできなかった.
④肝炎発症群であるLECラットと肝炎非発症群であるLEAラットとの間で交雑を作製したところ,F1雑種の肝炎発症は皆無であったが,F2雑種で30%,backcross群で40%の肝炎発症を認め,雌雄差はなかった.
⑤血中lgGの平均値は,LEA,F1雑種,F2雑種,backcross群およびLECラットの順に低値をとり,肝炎の発症はIgG値が低値であるものほど高率であった.
以上の結果より,LECラットの肝炎発生には肝炎ウイルスの関与は否定的であり,常染色体劣性遺伝様式に規定された遺伝的背景を有し,この遺伝的背景と関連していると推察されるIgG levelの低値が肝炎発生と相関性を有しているものと考えられた.

キーワード
LECラット, 肝炎ウイルス, 常染色体劣性遺伝様式, IgG level

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