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日外会誌. 90(4): 598-604, 1989


原著

転移性肺腫瘍の手術成績と手術適応

大阪府立成人病センター 外科
*) 箕面市立病院 外科

龍田 眞行 , 小玉 憲 , 土井 修 , 岩永 剛 , 黒川 英司*)

(1988年4月30日受付)

I.内容要旨
転移性肺腫瘍72例に対して外科治療を施行した.全体の3生率は54.7%,5生率は41.3%であった.予後因子別に術後遠隔成績を検討したところ,有意差を認めたものは,肺転移までの期間と腫瘍径であり,原発巣治療から肺転移手術までの間隔の長いほど,および腫瘍径の小さいほど予後は良好であった.転移個数,肺転移の両側性および片側性は,予後と相関しなかった.従って両側多発例に対しても手術適応を拡大している.原発臓器別の検討では大腸癌が一般に予後良好で,5生率は61.4%であり積極的な手術の意義があった.腎癌は他の遠隔転移が死因となることが多く,術前検査を慎重に行なうことが重要である.乳癌は再発までの期間が長いが一般的な傾向に反して予後は悪く,新たな肺転移死が多い.ある一定期間,再発形態を充分に見た上で手術適応を決定する必要がある.睾丸腫瘍や骨・軟部肉腫などは化学療法の効果が予後を左右する最大の因子であり,化学療法の著効例,有効例ほど予後が良い.腫瘍マーカーの推移も重要な指標となる.肺癌肺転移例や両側多発肺転移例では残存肺機能の温存に対する工夫が必要である.両側多発転移性肺腫瘍20例に対しては,胸骨正中切開経路による両側同時肺手術を施行した.術死,術後死もなく,両側肺手術における優れたアプローチ方法である.

キーワード
転移性肺腫瘍, 術後成績, 胸骨正中切開, 両側多発肺転移

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