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日外会誌. 90(4): 532-537, 1989


原著

外傷性肝破裂に対する肝切除の再評価

帝京大学 医学部救命救急センター

葛西 猛 , 小林 国男

(1988年5月16日受付)

I.内容要旨
外傷性肝破裂に対する肝切除はその手術成績が極めて不良であったことから治療の主座を離れ,より姑息的な術式が治療の主座を占めつつある.しかしながら,肝損傷形態から考えるに,最も理想的且つ論理的な術式は肝切除である.当施設で経験した肝破裂に対する肝切除の死亡例の検討から,厳格な術式の選択基準と術中の補助手段の適格な応用の徹底が重要と考え,1985年に当施設独自のプロトコールを設定した.プロトコール設定前の肝破裂に対する肝切除14例中死亡例は9例,死亡率が65.7%であったのに対して,設定後は肝切除10例中死亡例は2例であり,死亡率を20%まで減少させることができた(p<0.05).設定後の生存8例の中に最重症型である肝破裂に肝後面下大静脈あるいは肝静脈損傷の合併例が4例含まれていたことを考え合わせると,この数字は容認できるものと考えている.肝切除に関係する術後合併症としているならぽ壊死組織を残す危険性の少ない解剖学的肝切除を選択すべきであるが,これを行なったとしても合併症を併発する可能性があることを念頭にいれ,肝切離面の十分且つ適切なドレナージを行なわなけれぽならない.また,Pringle timeが60分に及んだ2例とも術後一過性の肝不全に陥った.このことからショック合併例ではPringle timeを60分以内に留めるべきであると考える.

キーワード
外傷性肝破裂, 肝切除, 解剖学的肝切除, 非解剖学的肝切除, Pringle time


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