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日外会誌. 90(4): 496-503, 1989


原著

胸部食道癌の頸・胸移行部リンパ節転移
―超音波診断と取扱い規約に対する一考察を含めて―

鹿児島大学 医学部第1外科

吉中 平次 , 島津 久明 , 森藤 秀美 , 夏越 祥次 , 田辺 元 , 馬場 政道 , 福元 俊孝

(1988年1月21日受付)

I.内容要旨
広範かつ高頻度のリンパ節転移を来す胸部食道癌患者に対し,上縦隔から頸部の積極的リンパ節郭清を試みている.また,従来からの術前超音波検査でも,convex型探触子で胸・鎖骨上縁から気管周囲,上縦隔を覗き込むようにして,転移頻度や取扱い規約上関心をもたれる移行部も検索範囲に含めている.
系統的両側頸部郭清が行われた胸部食道癌64例を対象に,取扱い規約のNo.106(胸部気管リンパ節)最上とNo.101(頸部傍食道リンパ節)下部を頸胸移行部とし,両者の境界を右総頸動脈分岐部の上縁(動脈角)に設定して,この領域のリンパ節転移状況と術前超音波診断成績を検討した.
その結果,①convex型探触子の利用で移行部の超音波検査は容易であったが,診断成績は検出率63.2%で他の領域に比べ不良であった.②64例中19例(右106最上:11例,右101:9例,左101:6例でのべ26例)に移行部の転移がみられ転移率は29.7%と高率であった.③比較したNo.104にもほぼ同等の23.4%(15例)に転移がみられた.8例で移行部と鎖骨上の両方に転移を認め,上縦隔や移行部に転移の無い直結型の鎖骨上(いずれも右)転移が4例ある一方で,鎖骨上などに全く転移の無い移行部単独転移も4例存在した.④移行部に転移を有するIm癌では,7例がNo.101の転移でn4(+)となるなど移行部や鎖骨上転移の関わりで,リンパ節転移程度の規約上の分布が複雑になった.
これらの結果から,胸部食道癌の上方向へのリンパ節転移部位として上縦隔から左右反回神経に沿って頸部へ.なる領域の重要性,この領域を介さない鎖骨上転移の存在などが明らかとなり同時に,No.106との境界や,Im癌における第4群としての扱いなど,頸胸移行部とくにNo.101に対する現行の取扱い規約の早急な見直しが必要と思われた.

キーワード
胸部食道癌のリンパ節転移, 両側頸部郭清, 頸胸移行部のリンパ節転移, リンパ節転移の術前超音波診断

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