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日外会誌. 90(4): 489-495, 1989


原著

深在性カンジダ症:
その発症誘因,臨床診断とアムホテリシン B 投与に関する考案

大阪大学 医学部救急医学

池上 敬一 , 田畑 孝 , 塩野 茂 , 杉本 壽 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(1987年7月14日受付)

I.内容要旨
過去5年間に,当科で経験した深在性カンジダ症38例を対象とし,その発症誘因,細菌培養検査による診断の限界と,アムホテリシンB(以下, AMPH)の有効投与量と腎障害に関する検討を行った.深在性カンジダ症の発生率は2.4%で,決して稀ではなかった.重度外傷患者,広範囲熱傷患者や重症感染症患者に発症する深在性カンジダ症の大きな誘因は,抗生剤使用に伴う苗交代現象であった.カンジダの侵入部位として,創部,各種カテーテルや気管内挿管に伴う宿主の感染に対する機械的防御機構の破壊が重要であった.対象患者の約30%に合併した消化管の粘膜病変は, カンジダの侵入経路となり,侵入したカンジダは門脈を介して全身に播種されたと考えられた.深在性カンジダ症を培養検査結果から診断するためには,部位別にカンジダ培養の意義を知ることが必要である.血液培養の腸性率は必ずしも高くないが(39.5%), たとえ陰性でも治療を要する場合がある.尿培養の陽性率は最も高く(63.2%), 同時に血液培養陽性となることが多かった.カンジダ性内眼球炎は深在性カンジダ症の診断に有用であるが,陽性率は必ずしも高くない.我々の場合は4例中2例に認めた.深在性カンジダ症治療の第1選択剤はAMPHである.AMPH経静脈投与では,総投与量300mg以上が有効と考えられた.クレアチニンクリアランスは,総投与量1,000mg未満の症例では可逆性であったが,1,000mg以上投与した症例では投与終了後も改善傾向はみられなかった. AMPHは早期に投与を開始すれば,300~ 1,000mgで有効であり腎機能障害も可逆性である.消化管内カンジダ異常増殖は,深在性カンジダ症の前段階とされている. AMPHの経口投与は消化管内におけるカンジダに有効である.さらに,大量投与では深在性カンジダ症治療の可能性がある.

キーワード
深在性カンジダ症, アムホテリシン B, アムホテリシン B 大量経口投与, 腎障害

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