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日外会誌. 90(3): 446-449, 1989


症例報告

温熱・化学・放射線療法により切除可能となった胃癌の肝転移の 1例

金沢大学 医学部第2外科学教室

浦出 雅昭 , 米村 豊 , 藤村 隆 , 竹川 茂 , 鎌田 徹 , 伏田 幸夫 , 宮崎 逸夫

(1988年5月18日受付)

I.内容要旨
60歳の胃癌患者に対して胃膵全摘術を施行したが,14ヵ月後に肝転移(S8)を認めた.転移巣は巨大で,かつ膵全摘後の重症の糖尿病があるため,切除不能と判定された.そこで8MHz高周波を用いて,温熱化学放射線療法(Hyperthermo-chemo-radiotherapy,以下HCR療法)を試みた.深部腫瘍に対する温熱療法は困難な例が多い.特に肝臓は豊富な血流により,殺細胞効果のある42℃以上に加温することは困難である.そのため,化学療法と放射線療法とを併用した.10回の温熱化学放射線療法により肝転移巣は94%縮小し,S8の亜区域切除が可能となった.組織学的には,腫瘍中心部は凝固壊死に陥っていたが,辺縁部には線維化の中に癌細胞が多数残存しており,切除した意義は大きいと考えられた.温熱療法を加えたこの集学的治療は外科手術適応の拡大につながると期待される.

キーワード
温熱療法, 胃癌肝転移, 組織学的効果

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