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日外会誌. 90(3): 440-445, 1989


原著

緊急手術を要した破裂性腹部大動脈瘤の手術方法の検討

済生会宇都宮病院 心臓血管外科
*) 現 産業医科大学 第2外科
**) 現 慶応義塾大学 医学部外科

木曽 一誠 , 四津 良平 , 前原 正明 , 梅津 泰洋 , 廣谷 隆 , 石倉 義弥*) , 竹内 成之**)

(1988年4月25日受付)

I.内容要旨
腹部大動脈瘤の破裂例は緊急手術を要し未だ手術成績は不良である.過去18年間半に当院で経験した手術症例の成績を検討し手術方法を検討した.症例は30例で破裂部位は後腹膜腔(24例),S状結腸(2例),動静脈痩形成(4例)であった.手術方法は原則として人工血管置換術とした(26例).残りの4例ではaxillo-bifemoral bypass,またはその他の方法をとった.手術死亡は8例(26.7%)で,昭和54年以後では23例中5例(21.7%)と成績は向上した.術前ショック症例は18例中6例死亡(死亡率33.3%)と成績不良であった.また術前の重篤合併症と術中出血量が成績を左右し,10,000ml以上術中出血例(2例)は共に死亡しており,術者の手術手技が手術成績を左右した.大動脈瘤の中枢側遮断は23例で腎動脈下部で充分で,3例で,腎動脈上部,4例で胸腔内遮断を要した.
破裂性腹部大動脈瘤では,診断できしだい,いかに早く手術にもってゆけるかが成績を左右する.我々は外来で診断つき次第,手術室へ直行,occlusive balloon(2例で有効),auto transfusion system(最近の7例で有効)をstand byし,開腹する.中枢側遮断は腹部で困難な時はthoracic clampも躊躇しない方針でいる.手術方法は通常の人工血管置換を原則としているが,腸管穿孔例ではaxillobifemoral bypass,動脈瘤空置法が有利であった.

キーワード
破裂性腹部大動脈瘤, 動静脈瘻, thoracic clamp, occlusive balloon, auto transfusion system

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