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日外会誌. 90(3): 396-403, 1989


原著

Dibutyryl cyclic AMP による D-galactosamine 急性肝不全治療の実験的研究

旭川医科大学 第2外科

柿坂 明俊 , 葛西 眞一 , 水戸 廸郎

(1988年5月11日受付)

I.内容要旨
細胞内情報伝達物質であるcyclic AMP(cAMP)の急性肝不全に対する効果を D-galactosamine(D-Gal)投与急性肝不全ラット(D-Gal 1.5g/kg腹腔内投与)に,細胞膜透過性が良好であるDibutyryl cyclic AMP(DBcAMP)を投与し検討した.実験群は,I群(前後投与群):D-Gal投与1時間前と1時間後にDBcAMPを7.5mg/kgずつ投与.II群(前投与群):D-Gal投与1時間前にDBcAMPを15mg/kg投与.III群(後投与群):D-Gal投与1時間後にDBcAMPを15mg/kg投与.IV群(D-Gal単独投与群)とした.効果判定は,生存率,肝機能および肝性凝固因子であるヘパプラスチンテスト(HPT),肝組織所見,肝組織ATP値,肝組織血流量などで行った.
生存率は,I群100%,II群90%,III群32%,IV群10%であった.血清glutamic oxaloacetic transaminase値(GOT),血清総ビリルピン値(TB),血糖値,肝組織ATP値は48時間後にI群,II群で有意に良く,III群でもIV群よりは良好であり,HPTはI群でのみ高値を示した.投与早期(1時間後)の肝組織血流量はIV群に比べてI群では有意に上昇し,II群,III群では非投与群と同程度であった.肝機能検査の経時的変化をみると,GOT,TBはI群で48時間後から,II群では72時間後から改善,血糖値はI群では徐々に上昇し,II群では常に正常範囲であった.48時間後の肝組織血流量はI群,II群で正常値を維持し,III群,IV群では低値を示した.同じく48時間後の病理組織所見は,I群では軽度のびまん性炎症細胞浸潤のみの変化で,II群はsingle~focal necrosis,III群はfocal necrosis,IV群はbleedingを伴うmassive necrosisを示した.以上より,外因性cAMP(DBcAMP)は,急性肝不全に極めて有効であった.

キーワード
Dibutyryl cyclic AMP (DBcAMP), cyclic AMP, 急性肝不全, D-galactosamine

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