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日外会誌. 90(2): 187-198, 1989


原著

Cyclosporine Aによる腎組織障害:その形態学的検討ならびに prostaglandin I2誘導体 OP-41483-α-CD 併用による腎毒性予防効果

弘前大学 医学部第1外科学教室(主任:鯉江久昭教授)

小林 慎

(1988年3月18日受付)

I.内容要旨
本実験の目的はcyclosporine A(以下,CsA)投与にともなう腎組織障害を形態学的に検討すると同時に,安定なPGI2誘導体であるOP-41483-α-CD(以下,OP)を併用投与することにより,これらの腎毒性を予防することにある.
実験動物にはLewis系ラットを用い,CsA単独投与群とOP併用群の2群を比較検討することにより,以下の知見を得た.
1)病理組織学的にCsA投与にともなう腎組織障害は従来報告されている近位尿細管空胞変性のみならず,腎細小動脈にも変化が認められることを確認した.これは電顕学的に中膜平滑筋細胞の周核空胞(peri-nuclear vacuole)として観察され,この変化は持続する動脈れん縮の形態学的結果と推定される.
2)さらにこれらの組織学的観察にもとづき,OP併用によるCsA腎組織障害の予防効果を検討した.近位尿細管ならびに腎細小動脈の変化をmorphometryにより,CsA単独投与群とOP併用群とで比較するとOP併用群では腎皮質に占める近位尿細管空胞変性面積の明らかな減少と,動脈病変SCOREの著明な改善を認めた.
3)全血HPLC法により,CsA trough levelを比較するとCsA単独投与群とOP併用群とでは,差を認めなかった.
4)血中6-keto-PGFは,CsA投与により有意に増加していた.
これらの結果から,CsA投与による腎組織障害は尿細管のみならず,腎細小動脈にも収縮性変化として,空胞変性の出現していることが形態学的に明かとなると同時に,これらの変化に対し生体内PGI2が重要な役割をはたしていることが示唆された.さらにCsA腎組織障害予防に対し,安定なPGI2,誘導体であるOPの併用が有用であることが確認された.

キーワード
Cyclosporine A (CsA), OP-41483-α-CD (OP), 腎組織障害, prostaglandin I2, 動脈収縮性変化

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