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日外会誌. 90(1): 82-92, 1989


原著

ウォータージェットによる肝切離の研究

北海道大学 医学部第1外科講座(主任:内野純一教授)

堀江 卓

(1987年9月1日受付)

I.内容要旨
肝切除手術では,実質切離時の出血を最少に抑えることが重要な課題である.そのためCUSAやMicrowaveなどが開発されたが,硬変肝では十分とはいえない.最近,ジェット水流が肝切離に有用であるとの報告があり,その基礎的実験および臨床的検討が不可欠となった.
本研究は,その臨床応用の可能性および有用性を検証する目的で以下の実験的,臨床的検討を行った.スギノマシン社製ウォータージェット装置を用いて,10頭の豚肝切離を行った.体重17kgの豚では,0.15mm径のノズルを用いると7~15kg/cm2の水圧が適当であった.切離断面は,手術直後では軽度の出血と壊死を認め,術後7日で胆管増生が強まり,21~28日で線維被膜化が完成した.
臨床的検討として,1986年6月から1987年3月までの10ヵ月間に,30例のウォータージェットによる肝切離を行い,従来のCUSAによるものと比較した.
成人硬変非合併肝ではノズル0.15mm径により平均16kg/cm2の水圧が適当で,0.3mm以上の脈管が温存された.しかし,硬変のすすんだものでは,CUSAに比べ切離が困難で,20kg/cm2に上げても切離できないものもあり,25kg/cm2にすると,太い脈管壁に小孔を生じ,出血した.切離面は,CUSAに比べ平滑で組織学的にも変性はわずかであった.水泡や跳返りが視野を障害し,今後の課題と考えられた.
術中出血量はCUSA例とほぼ同様で,また術後血液生化学検査上も他の方法によるものと差異を認めず経過した.後出血,胆汁漏形成はなかった.
以上よりウォータージェットによる肝切離は,CUSAの場合と同様に安全かつ有効に行いうることが明らかとなった.

キーワード
ウォータージェット, 肝切離, CUSA

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