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書誌情報]
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日外会誌. 90(1): 75-81, 1989
原著
大腸癌肺転移の外科治療
I.内容要旨転移性肺腫瘍に対する外科治療の歴史は比較的新しく,それぞれ生物学的態度の異なる原発巣別に評価することが必要であるが,まとまった症例数で検討した報告は少ない.
国立がんセンターでは1962年5月開院以来,積極的に転移性肺腫瘍の外科治療に取り組み,大腸癌肺転移切除例は1987年10月迄に,72例となった.そこで,手術適応,術式を省みるために,これらの72例を対象とし,肺転移切除後の予後,再発様式を手術根治性,術式,肺転移個数,転移巣の大きさを加味して検討し,以下の結果を得た.
全体の5年生存率は41.3%であった.手術の根治度で分けてみると,完全切除群は5年生存率45.1%であるのに対し不完全切除群は1年生存率20.0%と著しく不良で,有効な補助療法が存在しない現在reduction surgeryの意味はない.
肺転移切除後の再発は肺が多く,1年6ヵ月以内に多数が両側多発性に再発した.多発肺転移切除例では特にその傾向が強く,全例1年6ヵ月以内に生じ,80.0%が両側肺多発転移として生じた.術後呼吸不全を合併した2例は,何れも同時両側開胸で8箇所と9箇所部分切除したものであった.多発肺転移は殆ど全身転移の一部分症と考えられ,不良な予後と手術侵襲を考慮すると,外科治療の適応は乏しく,慎重を要する.
最大径3cm以下,単発完全切除例における部分切除と肺葉切除に予後の差はないが,切除後の再発様式に若干の差を認めた.部分切除後に,切除断端,肺門縦隔リンパ節再発を認めた.切除肺断端再発は全体で7例に疑われ,全例部分切除後であったこと,また3cm以下の肺転移でも4例にリンパ節転移があったことより,リンパ節再発さらに断端再発防止のために大腸癌肺転移の基本術式としては肺葉切除,縦隔リンパ節郭清が望ましい.
キーワード
転移性肺腫瘍(metastatic lung tumor), 大腸癌(colorectal cancer), 外科治療(surgical treatment)
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