[書誌情報] [全文PDF] (3928KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 90(1): 64-74, 1989


原著

胃癌切除後における胆囊超音波像および胆囊運動機能
ー超音波検査による経時的観察ー

京都大学 医学部外科学第1講座(主任:戸部隆吉教授)

渕上 哲

(1988年3月16日受付)

I.内容要旨
胃癌切除に伴う胆囊の術後病態を明らかにする目的で,胃癌根治手術施行患者48症例を対象に,個々の症例における胆囊超音波像および胆囊運動機能の経時的変化を,術前から術後12ヵ月にわたりprospectiveに追跡調査した.その結果,術後12ヵ月以内に48例中7例(14.6%)に胆石の発生を,また,術後1ヵ月以内に42例中19例(45.2%)に胆囊内debrisの出現を,それぞれ確認した.しかし,このdebris出現症例19例中,debrisから胆石への移行が確認された症例は僅か2例のみであり,残りの17例中16例においては,debrisは術後1ヵ月以降次第に消失していった.また,前記の胆石発生症例7例中4例においては,胆石発生確認までの観察期間中にdebrisの出現は全く認められなかった.次に,術後1ヵ月以内には,空腹時胆囊面積の著明な増大およびセルレイン筋注後の胆囊最大収縮率の著明な低下が観察された.術後1ヵ月以降,空腹時胆囊面積は術前値に比し常に有意の増大を示す一方,胆囊最大収縮率は漸次術前値に回復,術後12ヵ月に至り術前値との有意差は認められなくなった.これらの術後推移に関して,debris出現症例においてはdebris非出現症例に比し,術後1ヵ月以内の空腹時胆囊面積のの有意の増大および胆囊最大収縮率の有意の低下が認められた.しかし,胆石発生症例における空腹時胆囊面積および胆囊最大収縮率については,手術前後の全経過を通じて,胆石非発生症例との間に明らかな差異は認められなかった.以上,胃癌切除後急性期には胆囊内debrisが高頻度に観察され,その出現には胆囊腫大および胆囊収縮能の低下が密接に関与していることが明らかにされた.しかし,胃切除後胆石の発生機序に関しては,これら術後急性期における胆囊の術後病態は必ずしもその直接的な原因とはならないことが示唆され,胃切除に伴う食餌摂取後の胆囊収縮動態の変化等,他の要因について検討していく必要があると考えられた.

キーワード
胃癌, 超音波検査, 胃切除後胆石, 胆囊内 debris, 胆囊運動機能

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。