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日外会誌. 90(1): 12-21, 1989


原著

食道癌におけるデスモゾームと転移,浸潤様式に関する臨床的研究

神戸大学 医学部第2外科学教室(主任:中村和夫教授)
神戸大学 医学部第2病理学教室(指導:杉山武敏教授)

小山 隆司

(1987年11月4日受付)

I.内容要旨
食道癌症例26例と正常例5例の計31例を対象に,食道癌細胞の生物学的特性を形態学的に明らかにすることを目的に,電顕を用いて細胞間接着装置であるデスモゾームと浸潤様式,転移ならびに予後との検討を行つた.
まず正常細胞と癌細胞との比較では,デスモゾーム数はそれぞれ21.0±2.6(/細胞),8.9±3.4(/細胞)と細胞間の接着力の低下を反映して,正常細胞に比較して癌細胞でデスモゾームは有意に少なく,分化度別では高分化型,中分化型,低分化型の順に減少をしめした.浸潤様式に関しては,膨張性の浸潤様式をとるものに比較し浸潤性に増殖していくものでデスモゾーム数の減少が認められた.転移との検討では,リンパ行性転移陰性例(n=8),陽性例(n=18)のデスモゾーム数はそれぞれ11.4±2.2(/細胞),7.8±3.1(/細胞),血行性転移陰性例(n=15),陽性例(n=4)でそれぞれ9.0±2.4(/細胞),4.8±4.3(/細胞)とデスモゾーム数はリンパ行性及び血行性ともに転移陽性例で有意に減少が認められた.また,この関係を深達度別にみた場合にもやはり同様の結果が得られた.予後に関しては,術後6ヵ月以内に死亡した症例にはデスモゾーム数の減少した症例が多く,デスモゾーム数8.0(/細胞)を境に予後に差が認められた.以上の結果からデスモゾーム数の多寡によつて浸潤様式,転移及び予後に明らかな差がみられ,デスモゾームは悪性度をも含めた腫瘍の特性を推測する一つの指標に成るものと考えられた.

キーワード
食道癌, デスモゾーム, 浸潤様式, リンパ節転移, 予後

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