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日外会誌. 90(1): 5-11, 1989


原著

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) におけるコアグラーゼ型別と薬剤感受性に関する検討

広島大学 医学部外科学第1教室

竹末 芳生 , 横山 隆 , 児玉 節 , 藤本 三喜夫 , 瀬分 均 , 村上 義昭

(1988年1月12日受付)

I.内容要旨
最近のMRSAの分離頻度の増加は,目をみはるものがある.またMRSAの中でもメチシリン高度耐性株が問題にされるようになってきており,抗生剤の選択に対する考え方も新しい局面を迎える必要があるのではないかと考え,当科において1983年より1987年まで臨床より分離された152株を対照とし,MRSAとコアグラーゼ型との関連からメチシリン高度耐性株に対する治療についての検討を行ったので報告する.MRSAの分離頻度は61.6%であり,メチシリン高度耐性株は1987年度にはMRSAの81.3%を占めており耐性化が更に進んでいることが認められた.S. aureusにおけるコアグラーゼ型の検討から最近の当科での流行株はII型であることが判明し,またMRSAにおいては1984年まではIV型が主であったが,1986年以降II型がMRSAのほとんどを占めるようになっていた.II型ならびにIV型における耐性菌の比較を行ったところ,II型に,より耐性化した株が多くみられ,特にメチシリン高度耐性株は40株中39株をII型が占めていた.薬剤感受性に関しては,DMPPCに対しII型の方がIV型に比し耐性化が進んでいたが,MINO,OFLXに対しては逆にII型の方が良好な感受性を示した.この理由として,IV型株においては79.3%の頻度でPCaseを産生しており,II型株の33.3%に比し有意の差(p<0.01)を認めたことから,IV型に関しては耐性化に少なからずβ-ラクタマーゼならびにその他の修飾酵素の関与があり,MINO,OFLXに対する耐性化にも注意を要し,II型に関しては,耐性化の機序に,よりPBPの変化が前面に出ており,β-ラクタム剤に対しては高度耐性化する一方,MINO,OFLXに対しては良好な感受性を示したと考えた.メチシリン高度耐性株の各種抗生剤に対する感受性を比較したところ,II型がほとんどを占めていたため,β-ラクタム剤に関してはDMPPCに平行して耐性側に傾いたのに比し,MINO,OFLXは逆に良好な感受性を示した.

キーワード
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌, コアグラーゼ型別分類, 院内感染症


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