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日外会誌. 89(12): 2023-2027, 1988


原著

重症阻血肢に対する Extended Profundaplasty の臨床的研究

名古屋大学 医学部第1外科

池澤 輝男 , 宮内 正之 , 佐藤 晴男 , 森口 進 , 塩野谷 恵彦

(昭和62年12月11日受付)

I.内容要旨
1986年1月より1987年10月までの1年10ヵ月間に広範囲の閉塞性動脈硬化症による重症阻血の8例11肢に対し,inflowの改善手術と同時にextended profundaplastyを施行した.全例男性で,年齢は62歳から84歳までで平均72.8歳であつた.
症状は重症跛行が1例1肢,安静時痛が4例5肢,足部の潰瘍・壊死が3例5肢であつた.術前のankle pressure index(API)は5例7肢で測定不能であり,残りの3例4肢は0.11~0.27であつた.
inflowの改善手術はthrombectomyが2例に,axillo-bifemoral bypassが5例に,femoro-femoralcross-over bypassが1例に,aorto-bifemoral bypassが1例に施行された.大腿深動脈には6cmから15cmの動脈切開を加え,血栓内膜切除後,5肢には自家静脈による,また1肢には人工血管によるpathch plastyで,5肢にはバイパス脚を用いたhood型plastyで,extended profundaplastyが行なわれた.
術後APIは2例4肢で0のままであつたが,ドップラー音の聴取は可能となつた.このうちの1例は術後22日で心不全のため死亡した.他の1例は術前よりあつた右足部壊死と左足趾潰瘍のため右下腿切断,及び左足趾切断となつた.残りの6例7肢では,APIは0.36から0.56にまで上昇した.しかし0.36まで上昇した1例1肢は,足背の壊死のため下腿切断となつた.
全体では11肢中2肢で下腿切断となり,limb salvage率は11例9肢,81.1%であつた.
Aorto-iliac領域のみならずfemoro-poplitealないしは下腿までの広範な閉塞性動脈硬化症による重症阻血肢にたいするlimb salvage手術として,extended profundaplasty は十分に価値のある治療手段と考えられた.

キーワード
extended profundaplasty, 閉塞性動脈硬化症, 大腿深動脈, 重症阻血肢


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