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日外会誌. 89(12): 2010-2018, 1988


原著

左房腔内進展を伴う肺癌 4 症例の治療経験

大阪府立成人病センター 外科
*) 大阪府立成人病センター 循環動態科
**) 箕面市立病院 外科

児玉 憲 , 土井 修 , 龍田 眞行 , 小林 享*) , 筆本 由幸*) , 黒川 英司**)

(昭和62年12月25日受付)

I.内容要旨
経肺静脈的に左房腔内に進展した原発性肺癌の4手術症例を経験した.症例1:大細胞癌で当初,左肺全摘を予定し開胸したが,上肺静脈基部が著明に拡張し,連続して左房内腔に巨大な腫瘤を触知した.ゆえに,試験開胸に止め,9日後に体外循環下に左肺全摘,左房合併切除及び左房内腫瘤のen-bloc切除を行つた.症例2:巨細胞癌で,術中下肺静脈基部に著変は見られず,それ故,結紮切断したところ内腔は腫瘍で,左房内に遺残した多量の腫瘍塊による塞栓症を併発,直ちに,大動脈分岐以下の塞栓除去を行つたが,左中大脳動脈の塞栓にて術後死した.症例3:扁平上皮癌で,術前画像診断にてその左房腔内進展が正確に把握出来ており,体外循環下左肺及び左房内腫瘤のen-bloc切除に成功した.症例4:腺癌で,末梢発生であるにもかかわらず,腫瘍は肺静脈内を連続して左房腔内に進展しており,肺静脈結紮切断と共に,左房内腫瘤遺残部が大動脈内に流出,4ヵ月後に多発脳転移を来した.以上の4症例の経験から,このような進展形式を示す肺癌の特性として,原発部位が圧排性発育を示し巨大であること,肺静脈或は左房内の腫瘍部分は壊死傾向が強く,原発部位と比べ組織構築がより未分化であること及び間質成分に乏しいことがあげられる.一方,組織型や腫瘍占拠部位には一定の傾向はみられなかつた.体外循環下に切除しえた2症例のうち1例は術後7ヵ月で癌死,1例は7ヵ月で再発生存中である.このような拡大手術は致命的な腫瘍塞栓の危険からの回避による延命,及び不整脈や胸痛により低下したperformance statusの改善ということに,その意義を求めることが出来る.

キーワード
肺癌, 左房腔内進展, 体外循環, 左房合併切除

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