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日外会誌. 89(12): 1978-1989, 1988


原著

急性閉塞性化膿性胆管炎におけるエンドトキシン血症発症に関する研究
-とくにリンパ行性経路について-

広島大学 医学部外科学第1講座(主任:松浦雄一郎教授)
(指導:横山 隆助教授) 

児玉 節

(昭和63年1月8日受付)

I.内容要旨
急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)におけるEndotoxin(ET)血症発症経路一とくにリンパ行性経路の関与一について,雑種成犬55頭を用いて実験的検討を行つた.ET 10mcg/kgの胆道内投与にて血中ET値は胆道内圧25cm salineで10pg/ml以下,35cm salineでET投与後5分にpeak値24±9.2pg/ml,55cm salineで120.9±146.4pg/mlを呈し,胆道内圧の上昇に伴い高値を示した.とくに55cm salineでは臨床的に重症胆道感染症に見られる値に近い値であつた.つぎに,胸管(TD)外瘻犬を作成後,同量のETを胆道内投与し,リンパ行性経路について検討した.ET投与後120分間にTDからドレナージされた総ET量は25cm salineで1,272.6±1,021.1pg,35cm salineで2,739.9±1,821.7pg,55cm salineで4.9×104±6.5×104pgと胆道圧の上昇に伴い増加した.なお,生理食塩水を投与した対照群では504.4±267.9pgであつた.TDリンパ液中ET値も胆道圧の上昇に伴い高値を呈し,血中ET値の10倍近い値を示したが,ピーク時間は血中よりもリンパのほうが約20分遅れていた.またTD外瘻よりTDリンパ液を全量ドレナージしても,35cm saline,55cm salineではTDドレナージ犬と血中ET値に有意差を認めず,ショック状態も惹起された.以上の結果より,胆道圧が30~46cmH2Oと報告されるAOSC時におけるET血症発症には,リンパ行性経路の関与は少ないことが判明した.25cm salineではET血症は認められなかつたが,TDリンパ液からドレナージされたET量は対照群より有意に多く,低胆道圧下で,リンパ行性経路がET血症発症へ,どのように関与しているのか,という問題については,さらに検討が必要である.

キーワード
急性閉塞性化膿性胆管炎, cholangiovenous reflux, 胆道圧, リンパ行性経路, ET血症

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