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日外会誌. 89(12): 1950-1956, 1988


原著

ATP 活性を指標とした新しい制癌剤感受性試験

名古屋大学 外科学第2講座
*,**) 現在:藤田学園保健衛生大学 市橋外科

野垣 正樹*) , 市橋 秀仁**)

(昭和62年12月26日受付)

I.内容要旨
In vitroの制癌剤感受性試験として現在までに種々の方法が開発されてきたが,各々に短所があり,実際の臨床の場で用いられているとは言い難い.そこで簡便,迅速,かつ正確で臨床応用が可能な感受性試験の開発を目的として,癌細胞内のATP量を指標とした試験法を開発し,その有用性について検討した.
方法は細胞内のATPがluciferin-luciferaseにより蛍光を発し,その発光量がATPの量に比例することを応用したもので,癌細胞を制癌剤と一定時間接触させた後にLumiphotometer(TD-4000)を用いて自動的に発光量(R.L.U.)を測定した.初めにザルコーマS-180を用いて細胞数とR.L.U.との関係,mitomycin Cで処理したEhrlich腹水癌を用いて生死細胞とR.L.U.との関係を検討した結果,細胞内ATP量は細胞数,及び細胞の生死を正確に反映した.次にヒト胃癌継代培養株4株,ヒト大腸癌継代培養株5株を用い,マイクロプレートで7種類の制癌剤と48時間接触培養後,それぞれのR.L.U.を測定した.全例において制癌剤の濃度依存性が観察され,各株毎に異なつた薬剤感受性を示した.実際の臨床適用として,手術時に得られた胃癌の原発巣,転移巣の固形腫瘍を用いての測定でも継代培養株と同様の結果が得られ,効果判定が可能であつた.
本試験法は評価可能率が高く,しかも非常に簡便で短時間で施行できる点で,臨床応用への可能性の高い方法と考えられた.

キーワード
制癌剤感受性試験, ATP, 癌化学療法

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