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日外会誌. 89(12): 1943-1949, 1988


原著

中心静脈カテーテル留置に合併する血栓形成の検討

大阪大学 医学部救急医学教室

八木 啓一 , 川上 正人 , 杉本 侃

(昭和62年12月9日受付)

I.内容要旨
中心静脈カテーテルに形成された血栓をカテーテル造影法により検出し,その発生頻度,形状,その運命および発生におよぼす種々の因子の解析,さらには臨床症状への影響などを検討した.
昭和61年5月から62年5月までに当科に収容した患者に挿入された56例の中心静脈カテーテルを対象とし,抜去時に透視下のカテーテル造影を行い血栓の有無を確認した.その結果,56例中39例(70%)と高頻度に血栓が形成されていた.
形成された血栓はカテーテルを円筒状に薄く取り巻くものであり,その多くはカテーテル抜去後離断され血中に流失することが確認された.
血栓形成に影響を与える因子を解析するために,塩化ビニル,ヘパリンコーティング塩化ビニル,ポリウレタン,シリコンの4種類の材質別にカテーテルの留置日数と血栓形成の有無を比較した.材質別では血栓形成頻度に有意な差は認められなかつたが,カテーテルの留置日数が長期になるにつれて,血栓形成頻度は高くなり,10日以上では19例中16例(84%)に血栓が認められた.
カテーテル造影後にカテーテル先端部,カテーテル皮下トンネル部とカテーテル内血液の細菌培養検査を行ない,5例で培養陽性結果を得た.これはいずれも血栓が形成された症例であり,血栓が感染巣と成り得ることが示唆された.
以上より,中心静脈カテーテルの留置期間が長くなると,高頻度に血栓が形成されるだけでなく,その血栓が感染巣と成り得ることが示唆され,カテーテル管理には十分注意する必要があると考えられた.

キーワード
中心静脈カテーテル, 血栓, カテーテル敗血症


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