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日外会誌. 89(11): 1920-1923, 1988


症例報告

上腸間膜動脈の2分枝に発生した多発動脈瘤の1治験例
-症例報告と上腸間膜動脈領域に発生した動脈瘤本邦報告例の集計-

自治医科大学 消化器外科
*) 自治医科大学 病理

福本 孝 , 白倉 外茂夫 , 碓井 昌 , 柏井 昭良 , 金澤 暁太郎 , 清水 英男*)

(昭和62年12月18日受付)

I.内容要旨
上腸間膜動脈の2分枝に発生した多発動脈瘤症例を経験したので,上腸間膜動脈に発生した動脈瘤本邦報告例も集計し報告する.症例は54歳男性,既往歴,家族歴に特記すべきものはない.突然の背部痛で発症し,低血圧と貧血,腹膜刺激症状,軽度腹部膨満を認め,超音波検査で腹腔内液体貯留を認めた.腹腔穿刺で血液が採取され,腹腔内出血によるショックと診断し, 血管造影を施行したところ上腸間膜動脈Liolan分枝に動脈瘤破裂を認め,緊急手術を行ない,破裂していた動脈瘤の中枢及び末梢側を結紮し止血した.術後同部の状態を確認するために再度血管造影を施行したところ,中結腸動脈左枝にも動脈瘤が発見されたので再度開腹し,動脈瘤を結紮切除した.組織学的にはこの動脈の中膜が変性・壊死になり断裂した為に発生した動脈瘤と思われる.本邦における上腸間膜動脈領域の動脈瘤は自験例を含め49例で,本幹動脈瘤は15例,分枝動脈瘤は24例,壁在微小動脈瘤は10例であった.腹部内臓動脈瘤多発例は本幹動脈瘤で2例,分枝動脈瘤で9例であった.
本症は自覚症状に乏しく,破裂時に診断され緊急手術されることが多い.原因不明のショックを伴う腹腔内出血に際しては本症を疑い,動脈造影にて確定診断を下し,出血部位を同定することが望ましい. 又,多発する点についても充分注意を怠らないことが肝要であると考えられる.

キーワード
腹部内臓動脈瘤, 上腸間膜動脈瘤, 特発性中膜変性と動脈瘤


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