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日外会誌. 89(11): 1893-1902, 1988


原著

各種人工弁の水力学的特性に関する実験的検討

北海道大学 医学部第2外科教室(主任:田辺達三教授)

奥出 潤

(昭和62年9月17日受付)

I.内容要旨
Björk-Shiley弁(spherical disc), St. Jude Medical弁,Omniscience弁,Medtronic-Hall弁の4つの代表的な機械的人工弁について,補助人工心臓用の血液ポンプを中心とした実験回路で実験を行い,それぞれの水力学的特性を比較検討した. また,Omniscience弁,Björk-Shiley弁について傾斜型ディスクの開放角について実験的に検討した.
各人工弁をポンプの流入側(僧帽弁位), 流出側(大動脈弁位)に装着して,弁前後の圧較差と流量を測定し, これをコンピュータで処理した. この結果,全拍出量,平均圧較差,算出上有効弁口面積などのパラメータでは, Medtronic-Hall弁がやや抵抗が小さく,弁口面積が大きかったがその差は僅かであった. また,流量一圧較差曲線を用いた検討では,循環状態の変化に対する弁特性の変化がパターンとして認識され,弁動態の安定性の比較が容易に行われた.これによると,低駆動圧,頻拍,全負荷の変化など病的心機能状態のシミュレーションで各弁間の差異が大きくなったが, 4弁の中ではSt. Jude Medical弁が最も安定した弁特性を示し, 臨床における各種の循環条件においても安定した弁機能を発揮することが期待できると考えられた.
同じ弁試験回路に,光センサーを用いた弁開放角測定装置を装着し,各種条件で開放角を測定したが,Omniscience弁は何れの条件でも良好に開放し,臨床例で問題となつているような開放不全状態は再現することができなかった.

キーワード
人工弁の水力学的特性, 流量-圧較差曲線, Omniscience弁, St. Jude Medical弁, 人工弁開放角


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