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日外会誌. 89(11): 1886-1892, 1988


原著

異種大動脈弁による弁置換術症例の遠隔成績
-13年間の経験-

東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所 循環器外科

秋山 一也 , 中野 清治 , 今村 栄三郎 , 遠藤 真弘 , 橋本 明政 , 林 久恵 , 小柳 仁

(昭和62年7月31日受付)

I.内容要旨
1974年~ 79年に行われた第二世代の異種大動脈弁置換症例の手術成績と遠隔成績を報告した.使用した生体弁はHancock弁が133個, Angell-Shiley弁39個, Carpentier-Edwards弁22個,その他3個であった.症例は194例で女性105例,男性89例で年齢は18~62歳(平均38.8)であった.生体弁は僧帽弁位に182例,大動脈弁位に8例,僧帽弁+三尖弁位に3例,三尖弁位に3例で用いた. 21例を術後30日以内に失い, 173例の遠隔成績を得,結果は次のとうりであった.抗凝血薬療法に起因した出血,血栓塞栓症,置換弁心内膜炎, primary tissue failure, 弁機能不全の発生頻度はそれぞれ0.07, 1.62, 0.49, 2.74, 3.66(単位は%/患者・年)であった.血栓塞栓症,置換弁心内膜炎, primary tissue failure,弁機能不全の13年後のfreerateはそれぞれ87.0±2.9,95.6±1.5%,65.2±4.9,56.9±5.6%で, 13年後の実測生存率は67.4±.0%であった.
置換弁心内膜炎は術後1~2年に集中して発生した.抗凝血薬療法に起因した出血は問題とならず抗血栓性は高く,抗凝血薬療法なしで4例において妊娠,出産を行うことができた.しかし,耐久性に問題があり, 7年以降にprimary tissue failureによる弁機能不全の発生頻度が急激に増加した.現段階では抗擬血薬療法の禁忌例などの特殊な症例を除いて適応には慎重を要すると考えられた.

キーワード
Hancock弁, Angell-Shiley弁, Carpentier-Edwards弁, 人工弁置換術, 術後遠隔成績

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