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日外会誌. 89(11): 1860-1868, 1988


原著

門脈圧亢進症における奇静脈血流量の検討
-病態別の検討と直達手術の影響について-

東京大学 医学部第2外科(主任:出月康夫教授)

國土 典宏

(昭和62年10月31日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症における上行性の側副血行路の定量的な指標とされている奇静脈血流量に注目し,門脈圧亢進症48例を対象としてこの測定を行ない,原疾患別,肝障害度別あるいは食道静脈瘤の程度別等の検討を加えた. また,対象症例中肝硬変11症例において食道静脈瘤に対する直達手術前後の奇静脈血流量を測定し,側副血行路循環に及ぼす本術式の影響について考察した.
肝硬変42症例の奇静脈血流量は326±139ml/minで対照群の163±61ml/minに比べ有意に増加しており,食道静脈瘤を含めた上行性の側副血行路の血流増加が示唆された.特発性門脈圧亢進症(IPH)3例,肝外門脈閉塞症(EHO)3例ではそれぞれ411±227, 328±85ml/minで同様に増加していた.肝障害度別検討では奇静脈血流量,補正閉塞肝静脈圧ともにChild C群はA群に比べ高い傾向にあった.食道静脈瘤の形態(F因子)や部位(L因子)と奇静脈血流量の間には明らかな関係はみられなかった.
直達手術後,奇静脈血流量と補正閉塞肝静脈圧は有意に減少したが心出量は有意な変動を示さなかった.奇静脈血流量は術後も比較的高値を保つており,直達手術後の側副血行路の形成にも関与していると考えられた.

キーワード
奇静脈血流量, 門脈圧亢進症, 側副血行路, 食道静脈瘤, 直達手術


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