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日外会誌. 89(11): 1789-1795, 1988


原著

教室における消化性潰瘍に対する外科治療
-特に広範囲胃切除術後の長期成績-

大阪市立大学 医学部第1外科

西脇 英樹 , 西森 武雄 , 寺村 美香子 , 佐竹 克介 , 曽和 融生 , 梅山 馨

(昭和62年11月25日受付)

I.内容要旨
1972~1986年の15年間に当科にて消化性潰瘍で広範囲胃切除術を施行した307例を対象として臨床成績,長期予後,術後再発,術後愁訴,血漿セクレチン分泌について検討した.
手術件数はcimetidine導入を境にし1/3に減少したが胃潰瘍・十二指腸潰瘍ともにその減少率は同程度であった. 胃潰瘍手術症例の年齢ピークは50歳代に,十二指腸潰瘍例では40歳代にあり,性別では胃潰瘍・十二指腸潰瘍ともに男性に多くみられた.手術適応では, cimetidine導入後,難治性63%から44%に減少したが出血,狭窄,穿孔例では明らかな減少はなかった. 胃潰瘍,十二指腸潰瘍症例の血漿セクレチン値は空腹時,食後ピーク値ともに健常群と差はないが, 胃切除後の食後ピーク値は低値を示した.手術後のアンケート調査では回収率70%であるが,当科初回手術例には再発再手術例はみられず,小胃症状に伴うと思われる食事量の減少,体重減少の軽度障害が10~30%にみられたが,160例中140例(86%) に胃切後の術後経過良好との結果が得られた. また,他院初回手術の再発潰瘍7症例では, 6例に胃切除が行われていたが,再発の成因として,全例残胃が大きく,その関与が示唆された. また,再発までの期間では平均9年で長期と短期例にわかれる傾向にあった. 胃切術後愁訴と手術時年齢には明らかな関連はみられないが,術後経過年数では,術後6年未満の症例では食事量の減少や体重減少,下痢,食後の気分不良などを示す例が多かった.
以上の結果,胃潰瘍,十二指腸潰瘍に対する胃切除後の再発率は低く,術後愁訴高度例は4.5%以下であり, 86%に術後経過良好との回答を得, 胃潰瘍に限らず十二指腸潰瘍でも広範囲胃切除術は有効な治療法と考える.

キーワード
胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 広範囲胃切除術, 長期成績, 血漿セクレチン


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