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日外会誌. 89(11): 1769-1779, 1988


原著

食道癌再発に関する臨床病理学的検討
-とくに再発形式と術式の評価を中心に-

鹿児島大学 医学部第1外科

馬場 政道 , 吉中 平次 , 田辺 元 , 草野 力 , 福元 俊孝 , 愛甲 孝 , 島津 久明

(昭和62年11月24日受付)

I.内容要旨
1973年から1986年の胸・腹部食道扁平上皮癌の根治切除201例(c0,直死を除く)を対象として,CT,X線超音波検査等にて確認される臨床的レベルの再発を検討した.再発形式を,リンパ行性,血行性,リンパ行性+血行性の重複,その他(吻合部,播種,局所)の再発に分類し,初発再発確認後1ヵ月以内に認められる再発は全て一次再発とし,1ヵ月以降に新たに他の部位に認められる再発を二次再発として,主として一次再発について検討した.
再発は93/201例(46%)で,1年以内再発が再発例の55%,2年以内86%であつた.再発形式はリンパ行性44例,血行性32例,重複11例,その他の再発6例であり,リンパ行性再発の68%(30/44例)は頸部(13例),縦隔(10例),腹部大動脈周囲(7例)の単一部位再発で,血行性再発の94%(30/32例)が肺,骨,肝などの単一臓器再発であつた.3ヵ月以内再発15例中10例が頸部・上縦隔再発,再発後1年以上生存13例中10例が単一再発であり,3例が再発後3年以上生存中である.
血行性再発は癌腫遺残の可能性の低い症例と二次再発例で多く,脈管侵襲と相関しないことから,食道扁平上皮癌はまずリンパ節再発,次に臓器再発という傾向を認めた.
頸部郭清例では転移率の増加に伴う再発率の上昇は認めない.その再発形式では重複再発と術後19ヵ月以降の血行性再発が減少したが,リンパ行性再発の頻度が増加した.しかし,リンパ行性再発例の50%生存月数は23ヵ月と改善した.郭清範囲に含まれる頸部・上縦隔再発9例中6例は,手術時,左反回神経周囲リンパ節に転移が存在しており,拡大リンパ節郭清の重要性が示唆された.また,頸部・上縦隔リンパ節転移陽性例では血行性再発が多く,照射と化学療法の併用が重要である.
今後,単一再発の早期発見の重要性とともに,拡大リンパ節郭清,照射,化学療法の適切な選択と組み合わせが要求される.

キーワード
食道癌再発形式, 食道癌根治切除後再発, 食道扁平上皮癌

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