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日外会誌. 89(10): 1744-1747, 1988


症例報告

DeBakey IIIb 型解離に合併した大動脈-下大静脈瘻の 1 治験例

新潟大学 医学部第2外科

山本 和男 , 富樫 賢一 , 岡崎 裕史 , 山崎 芳彦 , 江口 昭治

(昭和62年9月10日受付)

I.内容要旨
患者は開腹手術時に破裂性腹部大動脈瘤を疑われ,当科に紹介された70歳の男性である.入院後破裂性腹部大動脈瘤に解離性大動脈瘤を合併していることが判明した.緊急手術を予定していたが肝腎障害と出血性胃十二指腸潰瘍があることがわかったため,保存的治療をまず施行した.その間に胸水,下肢の浮腫,連続性腹部血管雑音が出現し,次第に心不全症状が悪化したため,動静脈瘻の発生が疑われた.大動脈造影を施行し,DeBakey IIIb型の解離性大動脈瘤と腹部大動脈ー下大静脈瘻を形成した破裂性腹部大動脈瘤の合併と診断した.経時的CT検査で胸部大動脈瘤の拡大,進行は認めなかつたため,開腹手術により瘻閉鎖およびYグラフトによる血行再建術を行った.腹部大動脈ー下大静脈瘻を形成した破裂性腹部大動脈瘤で解離性大動脈瘤を伴ったものは本邦では1例報告されているのみであり,治験例としては自験例が本邦初と考えられた.

キーワード
大動脈-下大静脈瘻, 破裂性腹部大動脈瘤, 解離性大動脈瘤

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