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日外会誌. 89(10): 1692-1698, 1988


原著

ラット実験的肺転移モデルを用いた手術侵襲に伴う転移促進について
ー副腎皮質ホルモンの影響とOK-432前投与の転移抑制効果についてー

岐阜大学 医学部第2外科(主任:坂田一記教授)

木田 恆 , 佐治 重豊 , 五島 秀行 , 立花 進 , 国井 康彦 , 種村 広巳 , 坂田 一記

(昭和62年10月22日受付)

I.内容要旨
SD系ラットの低抗原性易転移性MRMT-1培養細胞を尾静脈より注入移植することにより,流血中に腫瘍細胞の存在する状況を設定しかかる状況下で皮膚切除あるいはこれに30分間の開腹を負荷した場合の肺転移形成におよぼす影響副腎皮質ホルモンの影響,さらにはOK-432前投与の効果につき検討した.
肺転移結節数は皮膚切除に30分間の開腹を負荷した場合は,皮膚切除単独群に比べ有意に増加し,hydrocortisoneの投与量依存性に増加した.また,術後経時的に血漿コルチコステロン値およびコーチゾール値を測定したところ,30分後ですでに3~4倍に増加し.7日目でも若干高値であつた.ところが,手術侵襲やhydrocortisone投与に伴う転移促進は,両側副腎摘除あるいはOK-432前投与により有意に防止可能であつた.
以上の結果,手術侵襲による腫瘍の転移促進は,手術侵襲度合いにより左右されるが,その一因としては,ストレスに起因する副腎皮質ホルモンの分泌増加による宿主免疫活性低下が関与している可能性が示唆された.

キーワード
手術侵襲, 肺転移モデル, 副腎皮質ホルモン, 宿主免疫活性, OK-432


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