[書誌情報] [全文PDF] (3905KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 89(10): 1662-1671, 1988


原著

Perfluorochemical 乳剤を用いた24時間ラット肝低温持続灌流保存

神戸大学 医学部第1外科 (主任教授:斉藤洋一)

荻野 和功 , 大柳 治正 , 宇佐美 真 , 斉藤 洋一

(昭和62年10月21日受付)

I.内容要旨
肝移植の臨床応用に向けて,低温持続灌流保存におけるperfluorochemical(PFC)乳剤の効果につき検討を加えた.純系Lewis系雄性ラットを用い摘出肝を6.5℃に保ち24時間持続灌流保存した.灌流液には20%PFC乳剤(Fluosol-DA)を用いた20%-FC群,PFCを半量とした10%-FC群,PFCを除いた0%-FC群の3群を作成した.
灌流量の変化に対する肝組織酸素消費量は,いずれの流量においても20%-FC,10%-FC,0%-FCの順に多くPFC乳剤の酸素運搬効果を示すものと考えられた.灌流量を0.3~0.4ml/min/g. wet liver weightと一定にし24時間灌流を行うと,12時間以降の各群の酸素消費量では,20%-FCが0%-FCには優るものの10%-FCに比べて優れているとは云えず,また灌流液組成の変化(GOT,GPT,LDH,potassium,glucose)では,逆に10%-FCの方が優つていた.移植後1週間生存率においても20%-FCは6例中1例(17%),10%-FCは6例中4例(67%),0%-FCは6例中0例(0%)であり10%-FCの使用は移植後の生存率を有意に改善した(p<0.05).20%-FCは酸素含有量は多いものの低温では粘度が高くなるため必ずしも高濃度が有利とは限らず,灌流時の温度に対する至適濃度が存在することを留意する必要がある.また灌流後の組織変化はHE染色において3群間に差異は認められなかつたが,酵素染色法においてはPFC非使用群にacid phosphatase(以下ACP)の細胞辺縁への偏在が認められ,肝細胞でのライソゾーム膜破綻及び胆汁分泌障害を示しているものと考えられた.以上より,ラット肝低温持続灌流保存において10%-FC乳剤は有用と思われた.

キーワード
同所性肝移植, 低温保存, 灌流保存, perfluorochemical emulsion, Fluosol-DA

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。