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日外会誌. 89(10): 1641-1646, 1988


原著

癒着性イレウスの超音波像に関する検討
ー特に, 手術適応との関連についてー

神戸市立中央市民病院 外科
*) 神戸市立中央市民病院 内科

小縣 正明 , 橋本 隆 , 徳家 敦夫 , 石川 稔晃 , 黒木 輝夫 , 冨田 周介*)

(昭和62年10月31日受付)

I.内容要旨
癒着性イレウスの超音波所見およびその手術適応との関連について検討を行つた.
対象は1983年1月から1987年7月までに当院で超音波検査(US)を行つた癒着性イレウス81例である.単純性イレウスのうち,保存的治療で改善した症例をI群(29例),手術的治療を要した症例をII群(24例),絞扼性イレウス症例をIII群(28例)として,US所見を比較検討した.
拡張腸管の最大描出径は,I群3.2±0.7cm,II群3.9±0.5cm,III群3.7±0.5cmであり,拡張程度はI群において有意に小さかつた.拡張腸管の壁肥厚は,I群21%,II群58%,III群50%に認めた.腸蠕動や腸内容の浮動性の減弱・停止部を描出した症例は,I群7%,II群29%,III群93%であり,III群において有意に高率であつた.腹腔内貯留液の描出率は,I群31%,II群58%,III群86%であつた.
これらのUS所見について,保存的治療で改善した症例と手術的治療を要した症例を比較すると,拡張腸管の最大描出径は後者において有意に大きく,壁肥厚,腸蠕動や腸内容の浮動性の減弱・停止部,腹腔内貯留液の描出率も後者において有意に高率であつた.
単純性と絞扼性の鑑別については,拡張程度や壁肥厚の描出率に有意差を認めなかつたが,腸蠕動や腸内容の浮動性の減弱・停止部,腹腔内貯留液の描出率は絞扼性イレウスにおいて有意に高率であつた.特に,限局的に腸蠕動や腸内容の浮動性の減弱・停止部を認める場合には絞扼性イレウスの可動性が高く,鑑別診断上有用な所見であつた.
以上,USは癒着性イレウスの診断のみでなく,手術適応の決定においても有用性が高いと考えられた.

キーワード
癒着性イレウス, 単純性イレウス, 絞扼性イレウス, 超音波診断


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