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日外会誌. 89(10): 1624-1631, 1988


原著

大腸癌における各種腫瘍マーカーの血中上昇因子に関する研究
ー腫瘍の血管構築像と門脈血中腫瘍マーカー値の関連からの検討ー

長崎大学 医学部第1外科

下山 孝俊 , 福田 豊 , 草野 裕幸 , 中越 享 , 平野 達雄 , 三浦 敏夫 , 富田 正雄

(昭和62年10月12日受付)

I.内容要旨
大腸に分布する血管系は腫瘍の増殖,生長にともなつて改築される.CEA,CA19-9,TPA,Ferritinの大腸癌に対する特異性を知るために,microangiographyでの腫瘍の血管構築像の特性と各腫瘍マーカーの灌流静脈血中の値(門脈血値)との関連性から血中上昇機序を検討した.1)各腫瘍マーカーの門脈血値が末梢血値より高くなる割合はCEA 75%,CA19-9 83%,TPA 57.9%,Ferritin 47.9%であつた.とくにCEA,TPAは異常高値を示す症例が多く,病期と相関する傾向がみられた.2)大腸癌の血管構築像は腫瘍の発育形式を反映した.腫瘍の増殖にともなう血管の改築様式は,腸壁外および腸壁内各層の血管改築,病型別の血管構成,腫瘍内の血管像の3要因で検討された.3)CEAの門脈血値は腸壁血管の改築様式と最もよく相関した.垂直方向進展を示す潰瘍型癌は水平方向進展を示す潰瘍型癌及び腫瘤型癌に比べて壁外血管系の改築が著しく,門脈血中のCEAも高値を示した.腸壁内血管系では筋層血管より中枢側血管に改築が認められ,腫瘍内血管像が糸屑状,糸玉状を呈するものに異常高値例が多い.4)TPAは腸壁内外血管系の改築に比例して異常高値を示したが,病態別に差はみられなかつた.CA 19-9は正常値内で変動する症例が多いことから,血中への移行はかなり弱いものとおもわれた.Ferritinは症例により変動が大きく,大腸癌に対する特異性は少ないものと推測された.5)腫瘍の増殖に対応して構成される血管構築像の特性は各種腫瘍マーカーが腫瘍から血中へ移行するための基本的要因になり得ることを強調した.

キーワード
腫瘍マーカー, 大腸癌, 血管構築像, 腫瘍還流静脈血

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