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日外会誌. 89(10): 1587-1593, 1988


原著

出血性ショック犬に対する triiodothyronine (T3) および reverse triiodothyronine (rT3) 投与の影響について

*) 東京大学 医学部第1外科
**) Department of Surgery, University of Florida College of Medicine 

重松 宏*) , Clayton  H. Shatney**)

(昭和62年10月30日受付)

I.内容要旨
全身の循環不全時にSick euthyroid(“low T3”)syndromeがおこり予後と関係するとされている.36頭の出血性ショック犬を用いてT3投与の効用とrT3の役割について検討を行つた.13頭には15μg/kgのT3を60分間のショック後に,10頭には15μg/kgのrT3をショック導入前30分に投与した.また13頭には同量の生食を投与して対照犬とした.平均動脈圧が40mmHgになるまでreservoirに急速に脱血し,60分間の血圧低下維持後reservoirとの回路を30分間遮断した.次いで脱血血を30分間で還血し1時間循環動態を測定した後犬舎で3日間観察した.T3投与により回路遮断中に心拍出量,一回拍出量,平均動脈圧,左右心室仕事係数や全末梢血管抵抗は有意に増加し肺血管抵抗係数は低下した.rT3投与群では代謝循環動態における対照犬との有意な差は,肺血管抵抗係数の増加と血中pHの低下のみであつた.対照犬群では13頭中6頭の死亡であつたのに対し,rT3投与群では10頭中9頭死亡し(p<0.03),T3投与群では死亡したのは13頭中1頭のみであつた(p<0.05).
以上の結果から,出血性ショック時にT3投与は心血管系受容体や視床一下垂体一甲状腺系を介して生存率を向上させるが,rT3投与は有害でありSick euthyroid syndromeにおいてその増加は生物学的活性をもつて不利な役割を果たすと考えられる.

キーワード
Sick euthyroid syndrome, 出血性ショック, triiodothyronine, reverse triiodothyronine

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