[書誌情報] [全文PDF] (1943KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 89(8): 1267-1272, 1988


原著

Tamoxifen 投与乳癌患者における血清中 Estrone sulfate の動態

#) 京都府立医科大学 第2外科学教室
京都府立医科大学 産婦人科学教室

安村 忠樹#) , 岡 隆宏#) , 本庄 英雄 , 岡田 弘二

(昭和62年8月21日受付)

I.内容要旨
乳癌はホルモン依存性の癌であり,エストロゲンが大きく関与している.ヒト乳癌組織中にはestrone(E1)やestradiol 17-β(E2)が高濃度で存在しており,これらのE1,E2は血中のestrone sulfate (E1-S)が腫瘍組織中のsulfataseによつて加水分解されて産生されると報告されている.また生体内のエストロゲンのうちE1,E2として存在する量は少なく,大部分はE1-Sとして存在する.すなわち乳癌の発生増殖にはE1,E2よりもE1-Sの方が重大な影響を与えると考えられる.そこで乳癌患者における血中E1-Sレベルを測定し検討した.
乳癌術後,経時的にE1-Sを測定した結果では,閉経前の患者で,術後補助療法としてタモキシフェンを投与された5例中2例が,9,380pg/ml,3,300pg/mlと正常有経婦人の月経周期レベルのピーク値2,670pg/mlを越える高値を示した.また外来患者42例の検討でも,閉経後の症例では,タモキシフェンが投与されていた群(380±290pg/ml,n=8)で,投与されていない群(220±150pg/ml,n=6)との間に差は認めなかつたが,閉経前の症例では,投与群4,980±870pg/ml(n=13),非投与群190±76pg/ml(n=4)とタモキシフェン投与群の方が有意な高値(p<0.01)を示した.この結果より,閉経前症例に対する術後補助療法としてのタモキシフェン投与は,再考を要すると考えられた.

キーワード
乳癌, 閉経前, 閉経後, 血清中 estrone sulfate, タモキシフェン


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。