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日外会誌. 89(8): 1252-1258, 1988


原著

遠位脾腎静脈吻合術の改良と予後

兵庫医科大学 第2外科

芦田 寛 , 石川 羊男 , 琴浦 義尚 , 高木 一光 , 宇都宮 譲二

(昭和62年9月1日受付)

I.内容要旨
選択的shunt術である遠位脾腎静脈吻合術に関して,近年その選択性の術後長期に渡る維持に疑問が投げかけられている.教室の二つの変還(手術適応基準の設定と術式改良)を踏まえて,遠位脾腎静脈吻合術96例の治療成績を検討した.術式改良としては,完全および不完全を含め,shunt脾静脈の膵よりの遊離である.手術適応基準設定以前を前期群とし,以後を後期群に二分し,術式改良により従来群,不完全遊離群と完全遊離群に三分し検討した.
①前期群(47例)に比し,後期群(49例)で5年から8年にかけ,累積生存率の改善傾向(p<0.10)を認め,肝不全死は前期群22例(46.8%)に比し,後期群で9例(18.2%)と有意(p<0.05)な減少を認めた.肝性脳症の発生頻度には差は認めなかつた.②術式改良に関して累積生存率では従来群(69例)に比し,不完全遊離群(16例)で1生率,2生率で有意(p<0.01,p<0.05)な改善を,完全遊離群(11例)で3生率で改善傾向(p<0.10)を認めた.肝不全死は従来群の28例(40.6%)に比し不完全遊離群で1例(6.3%)と有意(p<0.025)に減少していた.肝性脳症は従来群12例(17.4%)に比し,不完全遊離群と完全遊離群では認めなかつた.
以上の結果より,遠位脾腎静脈吻合術は教室の手術適応基準を遵守し,理想的にはshunt脾静脈の膵よりの完全遊離をはかるべきであるが,少なくとも膵尾部までの十分な遊離を行えば,選択的shunt術として妥当な食道静脈瘤治療法と考える.

キーワード
選択的 shunt 術, 遠位脾腎静脈吻合術, shunt の 選択性喪失, shunt 脾静脈遊離

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