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日外会誌. 89(8): 1192-1203, 1988


原著

同所性肝移植の実験的研究
―移植手術後の肝機能検査値,血中IRI,血中IRG,血中cyclic AMP の推移と移植肝の viability について―

岡山大学 医学部第1外科教室 (主任:折田薫三教授)

大野 靖彦

(昭和62年4月7日受付)

I.内容要旨
肝移植後の移植肝のviabilityは移植終了後の血流再開による肝細胞活動と移植に不可欠である肝冷阻血状態に起因する肝細胞障害の総和で表現されると考えられる.
そこで,著者は,移植肝への冷阻血による肝細胞障害を明確にするための肝移植手術の移植肝と全く同時間の肝冷阻血状態にした自己肝冷阻血モデルを作成した上で,肝移植群,肝冷阻血群,単開腹群の3群に術直後より術後168時間まで経時的に一般肝機能検査,hepatotrophic factorのインスリン,グルカゴン,およびグルカゴン負荷後の血中cyclic AMPを測定し,移植肝のviability判定に有効な指標につき検討した結果,次の結論を得た.
1)肝冷阻血によるanoxiaの由来の影響はs-GOTでは術後2日目まで認められたが,s-GPTでは長時間続いた.肝移植後長時間経過したのちのs-GOT,s-GPTの再上昇は拒絶反応による肝細胞崩壊に起因するものと考えられた.また,Al-phosphataseは拒絶反応判定に有用であつたが,T. Bilirubin,T. cholesterol,Albuminなどは移植肝のviability判定の指標として不適当と考えられた.
2)血中インスリンは拒絶反応を生じ肝細胞崩壊が起こつてもその影響は少なかつたが,血中グルカゴンは肝細胞破壊をよく反映し,移植肝の肝細胞障害度を把握する指標として有用であつた.
3)グルカゴン負荷後の血中c-AMP(ピーク値)およびc-AMP応答能は,肝細胞活動度をよく反映しており,移植肝のviability判定には有用な指標と考えられた.
以上より,肝移植後の移植肝のviability判定の指標としてはグルカゴン負荷後の血中c-AMP(ピーク値)およびc-AMP応答能がよい指標となりうることが示唆された.

キーワード
同所性肝移植, 一般肝機能検査, cyclic AMP, IRI, IRG

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