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日外会誌. 89(7): 1099-1104, 1988


原著

Left Main Trunk および Left Main Equivalent症例に対するA・Cバイパス術後左室機能の変化と予後に関する比較検討

土浦協同病院 心臓血管外科

長岡 秀郎 , 印南 隆一 , 荒井 裕国 , 登内 真

(昭和62年8月1日受付)

I.内容要旨
A・Cバイパス術を施行した左冠状動脈主幹部狭窄(LMT)9例および左前下行枝(LAD)と回旋枝の主要分枝前中枢側に狭窄を有する,所謂Left Main Equivalent (LME) 20例計29例を対象とした.これらのうち24例に手術前後で左室機能検査を行い,1例に術後グラフト閉塞を認め,グラフト開存を確認したのはLMT8例(I群),LME15例(II群)計23例であった.術前の左室前壁部分収縮率が正常下限の30%以下を示したのはI群4例(Ia群),II群8例(Ila群)であった.23例全例でLADへの血行再建は完全に行われた.手術死亡率,手術近接期梗塞発生率ともにLMT 11.1%, LME 5.0%とLMTで有意(p<0.02)に高率であった.完全血行再建率はLMT 62.5%, LME 66.7%で有意差はなかった.左室機能の変化:CIはI, II群とも術後有意に増加した.Ia, Ila群では有意増加なかった.EFは全群において術後有意増加を示した.Mean VcfはI群で有意増加なく,II, Ila群で術後有意増加をみた.PLVSP/LVESVはI群で有意増加なく,II, Ia, Ila群で術後有意増加を示した.左室壁部分収縮率は前壁でI, II, Ila群で術後有意増加を示した.心尖ではI群のみ術後有意増加をみた.後下壁は全群で有意増加なかった.不完全血行再建例に比して完全血行再建例で術後左室機能の改善は良好であった.術後の狭心痛消失率はI群100%, II群75%で,労働能力の改善は良好であった.術後8年のactuarial survival rateはI群88.2%, II群84.6%と良好であった.
以上により,LMTにおいては手術成績改善のために,より慎重な管理と完全血行再建率向上が必要と考えられた.

キーワード
左冠状動脈主幹部狭窄, Left Main Equivalent, A・Cバイパス術, 左室機能, 術後遠隔成績


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