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日外会誌. 89(7): 1083-1092, 1988


原著

体外循環後の中枢神経障害の早期発見
一連続脳波モニターによる臨床的検討

東海大学 医学部第1外科学教室

鈴木 一郎 , 金渕 一雄 , 小出 司郎策 , 川田 志明 , 正津 晃

(昭和62年7月31日受付)

I.内容要旨
体外循環使用による心臓大血管手術後の中枢神経障害を早期に発見する目的で,麻酔導入直後から連続脳波モニターを行った.基礎律動を脳波自動解析モニターにより高速フーリエ変換(FFT)した後,1~15Hz間の周波数分析をcompressed spectral array(CSA)で瞬時に描出し,連続的に三次元的に記録した.
大量のFentanyl使用によるneuroleptoanalgesia(NLA)麻酔下に,体外循環を使用して心臓大血管手術を行った成人例54例を,手術後の中枢神経障害の有無により3群に分類した.各症例は麻酔導入直後より手術終了後15時間まで連続脳波モニタリングを行い,その経過を,1)麻酔導入後体外循環開始前,2)体外循環開始後体温下降期,3)体外循環加温期,4)体外循環離脱後,の4つの時期に分けて,脳波基礎律動優位ピークを比較検討した.また,あわせて手術中の血圧,動脈血液ガスの各項目を検討した.
脳波基礎律動優位ピークは体外循環開始直後より急激に徐波に移行し,体温下降につれて徐波化がさらに進行した.中枢神経障害を残さずに麻酔から覚醒した群(術後正常群)では,体外循環加温期において脳波優位ピークは徐波帯域から速波方向へ速やかに移行し,左右差を認めなかった.そして体外循環離脱後も,優位ピークは速波帯域に明瞭に存在する傾向が持続した.一方,術後に何らかの中枢神経障害を認めた群(術後中枢神経障害群)では,体外循環加温期において,徐波帯域から速波方向へ優位ピークの移行を認められなかったパターンと,徐波帯域の優位ピークは減少して新たなピークが不明瞭となったパターンとを認めた.そして体外循環離脱後にこの2通りのパターンが持続するとともに,さらに複数のピークが不規則に出現して不安定に動揺するパターンを認めたが,この変化は術後正常群では認められなかつた.
すなわち,連続脳波モニターCSA表示の優位ピークの変動が,心臓大血管手術後の中枢神経障害発生の有無を早期に発見する指標となる可能性が示唆された.

キーワード
体外循環後中枢神経障害, 連続脳波モニター, 脳波基礎律動, 脳波パワースペクトラム

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