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日外会誌. 89(7): 1040-1048, 1988


原著

比較的早期の胆嚢癌に関する病理学的研究
一全層胆摘術の意義に関連して一

浜松医科大学 第1外科(主任:吉村敬三教授)

脇 正志

(昭和62年3月25日受付)

I.内容要旨
深達度が漿膜下層にとどまる比較的早期の胆喉癌(ss癌)25例の進展様式を標本の全割切片を用いて光顕的に検索した.また,胆石症例を用いて,通常の胆摘術と全層胆摘術の両者の,肝床部の切離面を比較検討した.ss癌では肝床部肝内に癌を認めず,全層切除例や肝床部切除例では肝床面の再発を認めなかつた.底,体部のSS癌では,胆嚢壁の漿膜下進展は主に頸部方向と横軸方向に向かつて不連続にみられ,うち3例では総胆管周囲に及んでいた.粘膜上の進展も同様の方向性を持つが,多くは連続性で,胆嚢管に達するものはなかつた.一方,頸部及び胆嚢管ss癌では,肝十二指腸間膜内の胆管周囲間質に高頻度に漿膜下進展を認めた.リンパ節転移は,発生部位にかかわらず高頻度(58%)に認めた.ss癌の通常胆摘術後の再発が肝床部分の胆嚢壁,胆管を含む肝十二指腸間膜,局所リンパ節の不完全な切除が原因であることが示唆された.また,胆嚢炎をともなつた胆石症手術として,全層胆摘術は,潜在的なSS癌の術中の癌の散布の防止に役立つものと考えられた.

キーワード
ss胆嚢癌, 漿膜下進展, 全層胆摘術

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