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日外会誌. 89(7): 1008-1013, 1988


原著

A 領域進行胃癌の予後の特殊性とその向上策

秋田大学 医学部第1外科

小玉 雅志 , 石川 浩一 , 小山 裕文 , 成沢 富雄 , 小山 研二

(昭和62年8月22日受付)

I.内容要旨
A領域進行胃癌の予後の特殊性を検討した.教室の過去11年間の進行胃癌治癒切除症例の5生率はA領域47.3%,M領域67.4%,C領域52.3%で,A領域胃癌の予後が最も悪かつた.リンパ節転移の有無からみると,転移のあるA領域胃癌の5生率が最も不良で,わずか34.2%であつた.主たる再発部位がリンパ節であつた例はA領域胃癌で23%に認め,他領域に比較し高頻度であり,さらにその約半数は肝十二指腸間膜内リンパ節再発による黄疸を初発症状としていた.これより,A領域進行胃癌の主たる予後規定因子はリンパ節であり,R2手術を標準としたこれまでのリンパ節郭清方針は再考すべきと考えられた.
そこで,StageI胃癌症例のA領域の漿膜下に,開腹時微粒子活性炭CH40を0.5ml注入し,リンパ流を検討した.小弯注入群と大弯注入群の各所属リンパ節の黒染率はまつたく異なる傾向を示し,1,2群リンパ節では前者で③,⑤,⑦,⑧,⑨リンパ節,後者では④,⑥リンパ節で高率であつた.3群リンパ節の黒染率は高く,小弯注入例では⑫リンパ節が33%と1群である④,⑥リンパ節,2群である①リンパ節よりも高率であり,大弯注入例でも⑭Vリンパ節が56%と1群である④リンパ節,2群である⑧,⑨リンパ節よりも高率であつた.また,A領域R2治癒切除進行胃癌におけるリンパ節転移率とStage I胃癌症例における黒染率とは同様の値を示し,転移しやすいリンパ節は微粒子活性炭も移行しやすいことが示された.
以上より,A領域小弯の進行胃癌では⑫リンパ節,大弯では⑭Vリンパ節郭清を徹底することが予後向上につながるものと考えられる.

キーワード
A領域進行胃癌, リンパ節郭清, 微粒子活性炭, A領域リンパ流


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