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日外会誌. 89(7): 999-1007, 1988


原著

早期胃癌400例の検討
一遠隔成績からみた合理的な術式について一

国立栃木病院 外科
*) 国立栃木病院 病理

高野 真澄 , 富田 濤児 , 橋本 敏夫 , 丸上 善久 , 北條 正久 , 菊山 成博 , 西田 一巳*)

(昭和62年8月31日受付)

I.内容要旨
1986年までの15年間に国立栃木病院外科で手術した早期胃癌400例の遠隔成績を調査し,病理組織学的因子とリンパ節郭清度が予後に及ぼす影響を検討して,早期胃癌の手術に対するわれわれの考えを述べた.
再発例は肝転移の1例のみである.全例の5年,10年,15年の累積生存率は0.892±0.016, 0.774±0.031, 0.649±0.084であつた.深達度,組織型,脈管侵襲の有無およびリンパ節転移の有無別に累積生存率をみると,いずれも推計学的な有意差はなく,これらの因子は予後に影響しなかつた.
リンパ節郭清度では,高齢者で他病死例の多いR0の症例は,R1以上に比較して累積生存率が低下する傾向がみられたが,R1以上の術式では有意な差はなく,肉眼的な絶対治癒切除と相対治癒切除の比較でも有意差はなかつた.
術後の合併症はイレウスが最も多く,リンパ節郭清度が進むにしたがつて高頻度に発生した.
最近われわれは,N0の症例については,m癌ではR0を,sm癌では大・小網,網嚢を温存した第1群リンパ節郭清を原則とし,N(+)の場合は当該リンパ節の摘出と,転移率の高い⑦⑧⑨の郭清を加えている.術後合併症もなく,しかも十分な根治性が得られるため,早期胃癌に対する妥当な術式であると考えている.

キーワード
早期胃癌, 遠隔成績, リンパ節郭清


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