[
書誌情報]
[
全文PDF] (3460KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 89(6): 945-951, 1988
原著
Behçet 病に合併した腹部大動脈瘤術後に発生した大動脈十二指腸瘻の 1例と本邦報告95例の Behçet 病動脈瘤について
I.内容要旨Behçet病に合併した腹部大動脈瘤切除後21ヵ月を経過して吻合部動脈瘤を形成し,十二指腸へ破裂した1例について報告するとともに,本邦報告の動脈瘤をともなうVasculo-Behçet病の95例について検討した.
症例は45歳の男性で昭和54年ブドウ膜炎と診断され,56年5月15日腹部大動脈瘤を発見され,Y型人工血管移植術を受けた.術後20ヵ月を経過して不全型Behçet病と診断され,翌月左下肢痛と下血のため,ショック状態となり,当科へ入院した.同日血流シソチにて吻合部動脈瘤の診断を受けた.入院49日後吐血,低血圧をきたし,血管造影施行したところ,腹部大動脈人工血管吻合部よりの出血を認め同日手術を施行した.腹腔内出血は認めず,吻合部に仮性動脈瘤の形成と十二指腸との間に瘻孔形成を認めた.術後出血はみられなかつたが腹腔内感染を併発し術後36病日死亡した.
動脈瘤をともなうVasculo-Behçet病は現在までに自験例を含めて95例(大動脈瘤46個,末梢動脈瘤108個,計154個)が報告されている.年齢は19歳~65歳まで,性別は男性82例,女性9例,不明4例である.病型別では完全型27例,不全型48例,疑い12例,記載なし8例である.破裂例は33個で,そのうち16個が大動脈瘤であつた.手術症例は154個中102個で,吻合部合併症を認めたものは大動脈瘤29個中11個,末梢動脈瘤73個中12個であつた.血管病変による死亡は大動脈17例,末梢動脈8例で,大動脈の死亡例のうち7例は吻合部の合併症により死亡した.このうち術後吻合部仮性動脈瘤の破裂により大動脈十二指腸瘻を形成したものは4例で,2例は破裂死,1例は術中死,残りの1例が自験例である.
大動脈瘤を合併したVasculo-Behçet病はまれな疾患であるが,難治で多発しやすく,再発をくり返すため,その救命率は低い.
キーワード
大動脈十二指腸瘻, 腹部大動脈瘤, Vasculo-Behçet 病
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。