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日外会誌. 89(6): 938-944, 1988


原著

動脈系グラフトを用いた冠動脈バイパス術―両側内胸動脈胃大網動脈を含めた65例の検討―

大阪医科大学 胸部外科

福本 仁志 , 須磨 久善 , 近藤 敬一郎 , 木村 弘 , 長谷川 滋人 , 武内 敦郎

(昭和62年5月15日受付)

I.内容要旨
近年,冠動脈バイパス術におけるグラフト材料として内胸動脈グラフト(IMAG)が注目され,使用例が増加する傾向にある.当教室では動脈グラフトを使用した冠動脈バイパス術症例を65例経験した.性別は男性56例,女性9例で,平均年齢は54.7歳であった.グラフトは片側IMAGは58例,両側IMAGは6例,胃大網動脈(GEA)2例で,吻合部位は前下行枝(LAD)57本,対角枝(Dx)11本,回旋枝(Cx) 4本の計72本であった.術後造影による早期開存率を同時期に行った伏在静脈グラフト(SVG)と比較すると, IMAGは96%,GEAは100%,SVGは88%であった.吻合部位別にはIMAGはLADが95%,Dxが100%,Cxが100%であった.またGEAはLADのみに使用し100%の開存率であった.一方,SVGはLADが90%,Dxが100%,Cxが100%であり,動脈グラフトの開存率の方が優れていた.動脈グラフトのみを用いた完全血行再建を目指して行った両側IMAG例6例は良好な開存がえられた.またGEAは再手術の2例に使用したが,良好な手術成績がえられ,優れたグラフト材料であると考えられた.
以上から,今後本邦においてもGEAを含めた動脈グラフトの積極的な使用,さらには動脈グラフトのみを用いた完全血行再建が望まれる.

キーワード
冠動脈バイパス術, 内胸動脈, 胃大網動脈


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