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日外会誌. 89(6): 880-888, 1988


原著

肝癌に対する OK432腫瘍内局注療法の基礎的研究

東京大学 医学部第1外科学教室 (主任:森岡恭彦教授)

石丸 正寛

(昭和62年3月14日受付)

I.内容要旨
切除不能肝癌に対する有効な治療法となり得るものとしてOK432の腫瘍内局注療法を,ラットのDAB誘発肝癌を用いて検討した.
ラットをOK432腫瘍内局注群(局注群),OK432腹腔内投与群(腹腔群),生食腫瘍内局注群(対照群)の3群に分け,生存期間,肺転移率,免疫学的指標と腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocytes, TIL)について検討した.
平均生存日数は局注群が腹腔群および対照群に対し有意に延長していた.また死亡時の肺転移率は局注群が腹腔群,対照群に比較して有意に低かつた.
脾細胞,腹腔浸出細胞のnatural killer活性は,局注群が対照群に対し有意に増強していた.脾細胞のインターフェロン産生能は局注群と腹腔群の間には差は無かつたが,両群とも対照群に対し有意に上昇していた.
腫瘍浸潤リンパ球数は,局注群が腹腔群,対照群に対し有意に増加しており,これは主にT cellの増加によるものであつた.局注群においては他の2群に比べてNK cell, suppressor/cytotoxic T cellの割合が高かかつた.
以上よりOK432の腫瘍内局注により,OK432の腹腔内投与と同程度の担癌ラットの細胞性免疫能上昇が得られ,またさらに腫瘍局所においてはリンパ球浸潤,特にNK cellとsuppressor/cytotoxic Tcellが増加していた.これらの因子により担癌ラットの生存日数が延長し,肺転移が抑制されたと思われ,OK432腫瘍内局注の有効性が示唆された.

キーワード
肝癌, OK432腫瘍内局注, 腫瘍浸潤リンパ球

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