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日外会誌. 89(6): 871-879, 1988


原著

肝癌切除例における DNA ヒストグラム分析の検討
―CCD 自己走査イメージセンサーによる高分解高速画像解析装置の応用―

岐阜大学 医学部第1外科
1) 岐阜大学 医学部第1病理

日野 晃紹 , 鬼束 惇義 , 後藤 全宏 , 尾関 豊 , 林 勝知 , 広瀬 光男 , 吉見 直己1)

(昭和62年7月13日受付)

I.内容要旨
肝細胞癌の生物学的悪性度を核DNA量の面から検討することを目的として,高速画像解析装置RISASを応用して25例の原発性肝細胞癌DNAヒストグラムの解析を行つた.RISAS(Rapid Image Sensor Analytical System)は高解像能を有する画像解析装置で入力読取り部に,従来のテレビカメラにかえて固体撮像子であるラインタイプ電荷結合素子CCDイメージセンサーを受光部に導入した新しい方式を採用しており,パラフィン包埋切片から短時間に千単位の核DNA量の測定が可能である.えられた核DNAヒストグラムを臨床所見および組織病理所見と比較検討し以下の結果をえた.
1)65歳以上の症例は65歳未満の症例に比しmode値による差はなかつたが,平均値,S.D.,over 4C rateでは有意差をみとめ,高齢者ほど核DNAヒストグラムパターンはlow ploidyで分布範囲が狭かつた.
2)AFP値10ng/ml以下の群と1,000ng/ml以上の群を比較すると核DNA量の平均値において前者が有意に低値で,low ploidyの傾向を呈していた.
3)HB抗原の有無,腫瘍最大径と核DNAヒストグラムとの問には有意な関係は見出せなかつた.
4)病理組織学的所見と核DNAヒストグラムとの間には,有意な関係はみとめられなかつた.
5)1年6ヵ月以内に死亡した群では,核DNAヒストグラムは広い分布範囲を呈し,生物学的に悪性度が高いことが示唆された.
以上より原発性肝細胞癌においては,病理組織学的検索に加え,核DNAヒストグラムパターンを併せて検討することにより,より正確に予後を推測できると考えられた.

キーワード
肝癌, 癌の悪性度, DNA ヒストグラム, 画像解析法, RISAS (Rapid Image Sensor Analytical System)


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