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日外会誌. 89(5): 757-762, 1988


原著

重度骨盤骨折に対する経カテーテル的塞栓術の治療成績の検討

大阪大学 医学部救急医学

横田 順一朗 , 川上 正人 , 岩井 敦志 , 田中 裕 , 杉本 寿 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(昭和62年6月2日受付)

I.内容要旨
本研究は,骨盤骨折に対する経カテーテル的塞栓術の止血効果を評価する目的で,塞栓術導入による治療成績と塞栓術適応例における臨床病理像を検討した.
新鮮骨盤骨折226例を対象に,経カテーテル的塞栓術導入前(I群: 177例)と導入後(II群: 89例)に分かち,死亡率,死因,合併症を比較した. さらにII群においては塞栓術適応例の転帰,血管造影所見,骨折形態,塞栓術前後のvital signの変化を検討した.
1) 両群間に24時間以内の死亡率には差を認めないが, II群で出血死が少なく,とくに骨盤骨折による出血死と合併症の頻度が有意に低かった.
2) 血管造影を施行した27例より,骨盤環の後方部に骨折を認めない場合でも上臀動脈など大坐骨切痕付近に出血を認め,血管造影が損傷範囲特定の一助となった.
3) 塞栓術施行19例においては,処置前後1時間で収縮期血圧,中心静脈圧,尿量の有意な改善と輸血量の減少を計ることができた.
4) 塞栓術に起因する合併症は全く認められなかった.
以上より,骨盤骨折に対する経カテーテル的塞栓術は,出血部位同定の利点に加え,止血効果および臨床成績改善の点で有用な治療法であることが示された.

キーワード
骨盤骨折, 後腹膜出血, 経カテーテル的塞栓術


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