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日外会誌. 89(5): 725-736, 1988


原著

乳がんにおけるestrogen receptor, epidermal growth factor, epidermal growth factor receptorに関する 免疫組織化学的, 生化学的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

戸井 雅和

(昭和62年6月29日受付)

I.内容要旨
最近乳がんのステロイドホルモン依存性増殖において,従来のステロイドホルモン―レセプター系に加え増殖因子―レセプター系増殖が関与すると考えられる様になつてきた.そこで86例のヒト乳がん組織材料を用い,免疫組織化学的,生化学的手法によるestrogen receptor(ER)の検討を行なうとともに,代表的増殖因子epidermal growth factor(EGF)とそのレセプターepidermal growth factor receptor(EGFR)とERとの関係を検討し,以下のような結果を得た.
1.抗ERモノクロナール抗体を用いた免疫組織化学的検討において,ERは核に染色され,ER陽性に染色される細胞(ER陽性細胞)の分布は非常に多彩で多様性に富んでいた.
2.ER陽性細胞率と染色強度を用いた免疫組織化学的ERの判定と生化学的手法dextran coated charcoal(DCC)法によるERの判定は86例中79例(91.9%)に一致し,有意の相関関係が認められた(p<0.01).progesterone receptor(PgR)を同じくDCC法で測定したが,PgR陽性症例においてはER陽性細胞率が高い傾向にあつた.
3.EGFRは免疫組織化学的検討において31.6%(12/38)に,125I EGFを用いたcompetitive binding assayによる生学的検討において34.4%(13/38)に陽性と判定された.EGFRとERの関係をみると,免疫組織化学的・生化学的両検討において負の相関関係が認められた(p<0.05).
4.EGFは免疫組織化学的検討において57.9%(22/38)に陽性と判定された.EGF陽性症例は全例EGFR陽性症例を含んでおり,ERとの関係をみるとEGF陰性症例においてER陽性細胞率は高い傾向にあつた(p<0.05).

キーワード
乳がん, estrogen receotor, epidermal growth factor, epidermal growth factor receptor

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