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日外会誌. 89(5): 703-708, 1988


原著

閉塞性黄疸の分離肝細胞ミトコンドリア機能について

秋田大学 医学部第1外科

鈴木 克彦 , 小山 研二 , 浅沼 義博 , 大内 慎一郎 , 田中 淳一 , 白山 公幸 , 吉田 節朗

(昭和62年6月22日受付)

I.内容要旨
膵胆道系悪性腫瘍による閉塞性黄疸は肝不全,消化管出血など各種の重篤な合併症が生じやすく死亡率も高いため外科臨床上問題点の多い疾患群である.その基本的病態は肝のエネルギー産生能低下にあり,胆道閉塞期間の延長とともに肝ミトコンドリア機能の低下が指摘されている.しかし,その本態がミトコンドリア自身の障害かあるいは肝細胞内外のビリルビンや胆汁酸,エンドトキシンなどの呼吸阻害因子の増加にもとづく二次的な呼吸抑制によるものかは明らかにされていない.本研究ではラットの胆管を結紮切離して閉塞性黄疸を作成し, 1, 2, 3週後に肝左葉組織から直接分画したミトコンドリアと,他の肝葉からSeglen法で肝細胞を分離洗浄してからその肝細胞より分画したミトコンドリアの呼吸能を比較検討した.前者の呼吸能は黄疸の持続とともに低下し, ATP生成能は1, 2週後に対照の75%, 3週後には58%と有意に減少した.一方,後者のATP生成能は各閉塞期間で97%, 88%, 87%を維持した.各ミトコンドリアペレットの電顕的観察では,対照,黄疸とも肝組織より直接分画したミトコンドリア画分には多くのデブリスがみられ,洗浄をくり返しても除去し難かった.また, 黄疸肝ミトコンドリアは不均ーな大きさでかつ対照肝より小さかった.これらから,黄疸肝ミトコンドリアの機能低下の機序はそれ自体の障害よりもむしろミトコンドリアをとりまく環境因子ービリルビン,胆汁酸などーによる呼吸阻害が主体であると考えられた. この成績は,閉塞性黄疸例に対しては単にその閉塞解除のみならず,血液浄化法によって呼吸阻害因子を除去することによって肝エネルギー代謝の回復正常化が期待できることを示唆している.

キーワード
黄疸肝, 分離肝細胞, ミトコンドリア, ATP, 肝障害


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