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日外会誌. 89(5): 664-670, 1988


原著

胃周囲のリンパ系からみた胃癌のリンパ節郭清の検討

癌研究会附属病院 外科

吉田 和彦 , 西 満正 , 太田 惠一朗 , 中島 聰總 , 大橋 一郎 , 高木 国夫

(昭和62年6月24日受付)

I.内容要旨
微粒子炭素(CH44)を用いた胃周囲のリンパ系の分析と,実際のリンパ節転移パターンの検討より,胃癌リンパ節郭清における問題点を考察した.
CH44を点墨した胃癌200症例を対象とし,術中観察による炭素の流れと,リンパ節黒染率より, 4領域(噴門,左大弯,小弯,右大弯)のリンパ系を分析した.
噴門領域の主体は左胃動脈リンパ系であり,脾動脈,左下横隔動脈,傍食道,小網内,横隔膜に沿うリンパ系も存在する.左大弯領域は脾動脈リンパ系が主体である.小弯領域は左胃動脈リンパ系が主体であるが,右胃動脈リンパ系の存在も示唆された.右大弯領域のリンパ系は幽門下で分散される.主流は膵頭部周囲を経て,腹腔動脈周囲に達する系である.また右胃大網静脈リンパ系も重要である.膵頭後部では,大動静脈間,肝十二指腸間膜などのリンパ節の密接な関係が示唆された.以上より胃周囲のリンパ系は原則的には支配血管に沿い,腹腔動脈周囲に集約される.左下横隔動脈と右胃大網静脈リンパ系はその例外である.
1,097例の胃癌のリンパ節転移パターンの分析では,上部胃癌において,第3群より第4群の方が転移率が高かった.
胃癌のリンパ節転移は胃のリンパ系と密接な関係があり,癌占居部位別のリンパ系を把握し,術中のリンパ節迅速生検を併用することは,合理的な重点郭清を施行する上で有用と思われた.

キーワード
胃リンパ系, 胃癌, リンパ節転移, 微粒子活性炭(CH44)


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