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日外会誌. 89(5): 655-663, 1988


原著

胃癌に対する内視鏡的治療

新潟大学 医学部第1外科
*) 現・新潟県立がんセンター新潟病院 外科

梨本 篤*) , 前田 長生 , 佐々木 公一 , 武藤 輝一

(昭和62年6月13日受付)

I.内容要旨
近年,高齢者胃癌の増加に伴い胃癌に対する内科的治療の適応が拡大されつつある.我々は,高齢,手術拒否,重症合併症によるpoor risk等のやむを得ない事情があり手術のできない症例に限り1981年1月より内視鏡的治療を開始し,その有効性と限界につき検討を加えた.内視鏡治療としてはOK-432, MMC+ 5-FUによる局注療法と高周波ポリペクトミーを用いた.
1) 進行胃癌3例に対する局注療法はいずれも無効であった.
2) 早期胃癌に対しては
① OK-432 5-20K.E.の局注6例では有効率33.3%と低率であり抗腫瘍効果は不十分であった.
② MMC (2mg) +5~FU (250mg)局注の7例では有効率85.7%と高率であったが, CRは3例のみであり根治治療法としては改善の余地がある.
③ 高周波ポリペクトミーを施行した8例は全例再発の徴候なく生存中であり,症例を厳密に選択することにより,適応を拡大し得る可能性が示唆された.
④ 内視鏡的治療後胃切除された症例の検討より随伴性Ilb病変および粘膜下層への浸潤に対しては充分な注意が必要であることが示された.
現時点ではリンパ節転移の有無,水平方向,垂直方向への癌浸潤に対する臨床的診断能力に限界があり,内視鏡的治療の早期胃癌に対する安易な適応拡大は危険である.内視鏡的根治治療の選択には充分に慎重でなければならず,やむを得ない場合を除いては手術療法を選択すべきである.

キーワード
早期胃癌, 内視鏡的局注療法, OK-432局注, MMC+5-FU局注, 高周波ポリペクトミー

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