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日外会誌. 89(4): 494-507, 1988


原著

ヌードマウス移植腫瘍における MMC 感受性と腫瘍の細胞蛋白質の変動に関する研究
ー二次元電気泳動法を用いた検索ー

慶応義塾大学 外科教室 (指導:阿部令彦教授)

高橋 哲也

(昭和62年5月12日受付)

I.内容要旨
Mitomycin C (MMC)に対する感受性の異なるヒト胃癌株(Exp4,H-111)大腸癌株(SW403,SW408)をヌードマウスに移植し, MMCに対する感受性と二次元電気泳動法による細胞蛋白質の変動との関連を検討した.その結果, 1) MMCに対する感受性はExp4が最も高い感受性を示し,SW403,SW408では中等度の感受性を, H-111では薬剤抵抗性を示した. 2) MMC投与後の組織学的検索ではExp4においてのみ細胞の変性像を認めたが,残りのSW403,SW480,H-111では変化を認めなかった. 3) 細胞蛋白質の検索では, MMC投与によりExp4において最も顕著な変動が観察され,ついで SW403,SW480では軽度の変動が示されたが, H-111では変化が認められなかった.Exp4では9個の蛋白スポット,82K/6.3 (MW/pl) SOK/6.8,79K/8.4,72K/8.2,70K/6.0,61K/7.5,50K/8.5,43K/8.1,35K/8.1が減少した.SW403では11個の蛋白スボット, 100K/8.3,82K/6.3,72K/8.5,72K/8.2,61K/7.5,56K/8.1,50K/8.5,39K/8.2,36K/8.5,36K/8.3,35K/8.6,SW480では 6個の蛋白スボット,100K/8.3,82K/6.3,72K/8.5,72K/8.2,56K/8.1,50K/8.5が減少した.これらのうち 3個の蛋白スポット, 82K/6.3,72K/8.2,50K/8.5はExp4,SW403,SW480の3株に共通して減少した.これに対し,H-111では蛋白スポットの変動は認められなかった.4) MMC投与後,腫瘍を再増殖させたExp4では,再増殖により組織学的変性像が消失するとともに,減少した蛋白スポットが増加し対照群の細胞蛋白スポット像にほぼ復した. 5) 非担癌正常マウスにMMCを投与し,肝・腎の細胞蛋白質の変動を検索したところ,蛋白スポットの変動は示されなかった.
以上よりMMC投与による腫瘍の細胞蛋白スポットの減少とMMCに対する感受性との間には一定の関連が示された.

キーワード
細胞蛋白質, 二次元電気泳動法, 制癌剤感受性, マイトマイシンC, ヌードマウス可移植性ヒト腫瘍


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